Re: 短筆部文集 // 3冊目 (マイペースに製作中!) ( No.94 ) |
- 日時: 2008/03/11 00:39:27
- 名前: 玲
- 「悪かったって。んな怒んなよ」
部屋の隅で胡坐をかき不貞腐れているリエンに対し、真黒に包まれた少年は宥めるように声を掛ける。 しかしどこまで本気なのか、微かながらに笑みを浮かべるその顔からは誠意が伝わってこない。それが更にリエンの怒りを煽っている。 ただリエンが部屋の隅から移動しないのにはもう一つ理由があった。
――この男、何を考えている。
実力からいって彼が伝説と謳われた殺し屋だということに間違いない。鋭い殺気も本物だった。 ……それにも関わらず、あの写真に写っていた少年とはあまりにもかけ離れているような気がして、納得がいかなかった。 相手の考えが読めない以上、不用意に動くのは危険すぎる。 故にリエンは、あえて動かずに"黒猫"の様子を窺うことにしたのだ。 しかし相手が謝ってくるだけでは状況が変化することはないと思い直し、彼と正面から向かい合った。
「あんた、アーキュラン・モーリヒィ・ブルドンで合ってるよな」
まさかここまできて違うことはないだろうと思ったが、確かめるに越したことはない。そう思ってのことだったのに、
「いや?」
簡単に否定された。
「オレはアーク。只の賞金稼ぎさ。……ええと」
成程彼はリエンに名前を尋ねているようだったが、今のリエンにそんな余裕はない。
――アークだと? あの殺し屋じゃないのか? いやでもアーは合ってる。けどそんな……
自分でも何を考えているのか解らなくなる反面、ここまで冷静さを喪ったのは久しぶりだなどと客観的視点で見つめる自分にも気付いた。だからまだ冷静だ。 取り敢えず名乗られたら名乗り返すのが礼儀だとある人物に教わったことを思い出し、警戒しながらも相手を見据える。
「……リエン。リエン・セイリアだ」 「リエンかー。名前までかわい……」
またもや皆まで言い終える前にリエンの拳が彼を襲う。 ただ今回は先とは違い、ひょいっと交わされてしまった。 続けての二打目も彼に命中することはない。 相変わらず笑みを浮かべている黒猫――アーク・ランは、やっとリエンの機嫌が直ったと一人勘違いをしながら楽しんでいた。
事態が収拾されたのはそれから数分後のことで、一人の少女の登場と同時であった。 訊けばアークの連れで一緒に旅をしているという。 さらに彼のことを説明してもらうと、やはり彼は伝説の殺し屋のようで、でも今は違う……と。 どういう経緯で彼が変わったのかは彼女も詳しく知らないらしいし、訊こうとも思わないそうだ。
「いいのか、俺にそんな話をして」
アークが別名を名乗ったのにはやはり大事な理由がある故だろう。 それをこんな出逢って数分の、しかも彼を暗殺しようとしていた男に話していいのだろうか。
「いいんです。だってあなた、アークと同じ匂いがするから」
そう言った少女は、今をとても幸せに生きている気がした。
--------------------------------- (>>37の続き)
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Re: 短筆部文集 // 3冊目 (マイペースに製作中!) ( No.95 ) |
- 日時: 2008/03/13 17:57:20
- 名前: 色田ゆうこ
- 「あーら、もしかしてそこにいるのは毎日年上に向かってあるある五月蝿い、風紀委員のおちびさんかしら?」
「しっ、シードル……!」
苺建はますます泣きたくなった。走り出したい衝動に駆られるが、逃げたら負けある! と自分に言い聞かせる。 ”天下の副会長さま”。 自前の、見事なライムライトの髪を靡かせ、シードルは気取った表情で苺建の前に立った。 特に飾らなくても、堀の深い派手な顔立ち。晴千夏といい彼女といい、なんでこんな煌びやかな奴らばっかり 生徒会本部役員になってしまったのか、苺建は彼らを支持した生徒たちを信じられなかった。
「シシードルなんてファーストネームじゃなくってよ?」
ふん、と器用に形のいい片眉を上げると、つやつやとした唇からプライドの高い言葉が飛び出す。 睨みつけると、その唇は勝ち誇ったようにふわりと笑みの形に歪んだ。奇声を上げたくなって、ガマンする。 顔が沸騰しそうだ。
「ところで」 右手で頬にかかった美しい髪を背中へ払い、彼女は腰を曲げて苺建と目の高さを合わせた。 「晴千夏がどこにいるかご存知?」 「3Cでたかにょと一緒にいたあるよ。抱きつかれたから肘鉄お見舞いしてやったある」 目を逸らし、唇を突き出してそう言うと、シードルは「まあ!」と大げさに驚いて悲しそうに眉を寄せた。 彼女の喜怒哀楽はその差が激しいので、何かの劇を見ているようだといつも思う。 あまりに元気のない表情をするので、苺建は思わず、必死に、言葉を付け足してしまった。
「で、でも抱きつかれたのはあたしが暴れようとしたからある! はるちかはお前以外の女に興味ないあるよ、……と、思う」
あいつは自分以外の男にも興味ないある、と心の中で付け足して、苺建は自分の言葉に頷いて見せた。
「あら」
俯きかけていた顔がぱっと上がり、その頬にさっと朱が差す。こういう時の顔は確かに綺麗なのに――。 と思ったそばから、 「それもそうですわね、こんなに素晴らしい恋人がいるって言うのに、 他の女に熱を上げるなんて、晴千夏はそんな下劣な男ではありませんわ。 特に貴女みたいな野蛮な方」
本気でこんなことを言うから参る。苺建の頭にもう一度血が上った。
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Re: 短筆部文集 // 3冊目 (マイペースに製作中!) ( No.96 ) |
- 日時: 2008/03/13 18:12:54
- 名前: 色田ゆうこ
- かいちょお、という甘い声に、晴千夏、そしてそれにつられて、鷹野が振り返った。
「あ、千弥」
まだ幼さの残る顔立ちの少年が、明るい色の髪を弾ませてやってきた。 窓際にいる2人に気付いて、にっこりと微笑む。 「先輩っ! 探したじゃないですかぁ。どうしていっつもいつも自分の教室にいないんですか?」 その後輩――アルヴァレス・ディディエ=千弥は前髪を手で押さえつけながら、 持っていた数十枚の書類を晴千夏に突き出した。 鷹野は、身を乗り出してそれを覗き込む。
――目が痛くなる様な漢字と数字の表がそこにあった。
「な、何だこりゃ……」 「あのクラス居心地悪いねん。担任は春添やし。死ねあのクソハゲ」 「監査、終わったそうです」 晴千夏は千弥の文句に苦笑しながら(さり気なく暴言を吐き)、それを受け取った。 「ほー。渡したんは今朝やったんに……」 「これ、本部関係のだろ? なんで千弥がお前に渡しに来んだよ」 「無知やなー。千弥クン、教えたって」 「あ、はい、ええと、鷹野先輩…………会計って誰だか知ってます?」 千弥が頭を掻きながら首を傾げた。鷹野は生徒会本部の面々を思い浮かべながら、どれだよ、と答える。 本部の3年生は皆関わりが深いので――何と言ったって、この晴千夏と、その妹と恋人だ――わかるのだが、 あとの、下級生の2人のことはよくわからない。
「小鳩、って子なんですけど……ええと、あの、黒い、フリフリの恰好の」 「ああ……」
――全身校則違反。 千弥が言う小鳩という少女は、苺建の言う、まさにそれだった。 このクラスにはもう一人、女の制服(しかもフリフリに改造されているもの)を着る有栖川という男がいるが、 その少女はそれよりも更にひどい気がした。制服すら着ないのだ。 そして、何と言うか――いつも何か、武器のようなものを手にしていた、気がする。
「ものすごく……その、……会長が、嫌いなんです」
千弥はちらりと横を気にしたが、晴千夏は「有名やけどねー」と書類をめくりながら笑った。
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盾と矛、どっちも持ってれば無敵なんだからいいじゃないか ( No.97 ) |
- 日時: 2008/03/15 00:22:55
- 名前: そら
- 参照: http://yaplog.jp/sora_nyanko/
- そばにいるのが苦痛なのだと
だったらいなくなればいいのに。 ひどく、矛盾していると思った。
「疲れるよ、お前といると」 「……ふうん」 それは、思いのほかすんなりと受け入れられた。 何年「友達」だっただろうか。覚えていないほど昔、もしくは初めからそんな関係ですらなかったのかもしれない。 彼はどこか申し訳なさそうな、情けない顔をしていた。 「そうやって……話聞いてるか聞いてないかわからないし、困ってても見て見ぬフリだし。誰にでもそうだよな、冷たいよ、お前」 そうなのか、自分ではせめてぬるいくらいだと思っていたけど。 ふざけるなという顔をされ、黙ることにした。
「……悪いな、もうつき合ってられない」
ぼんやりと歩いていた所為だろうか、気が付くと周りは知らない場所だった。 さて、困った。どうするか。 ポツンとひとりきりで突っ立っている自分は、果たしてどんな表情をしているのだろうか。 都合よくあったビルの窓ガラスに、いつもと変わらない自分が映る。 これはたしかに、冷たいといわれておかしくない。 「……そんなつもりもないんだけど」 ただ、必要とされたときにどう反応していいかわからないだけ。 必要とされない存在になるしか道はないか。
しかし、まあ。 「ごめん清水! 昨日ちょっとイライラしてて……友達やめないで、頼むよ!」 「……うん」 結局こうなるわけか。別にいいけど。
矛盾もなかなか退屈しないし。
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アプリコット・クラウンの様な。 ( No.98 ) |
- 日時: 2008/03/15 21:13:33
- 名前: 深月鈴花
- ぼふっ、とあたしは自分の家のベッドに身を投げた。 横のサイドテーブルに置いてある時計を見ると、時計の針は午後11時14分を指していた。
いつもならお風呂に入って寝るのだけど、今日は違う。 ……台本を読まなければならない。 久しぶりの学園ドラマだった。それはいい。ただ……共演者が、かなりの豪華キャスト。 まず、『CROSS』の二人に『ドロップ』のCHIKAにHINATA。その他にも最近よくテレビで見かける若い俳優や女優。 ここにゲスト出演とはいえ、混ざるのか。浮いちゃいそうだなぁ……と、台本を読みながら思った。 普通の学園ドラマなのだけど、『CROSS』のユウの役が意外だった。でも、彼の顔立ちからしたら……なるほど、合っているかもしれないと思う自分いた。 あたしの役はカイ(の役)を慕う純朴な女子高生、なのだけど。 ………演技は、「自分」と「役」の境目が曖昧になってしまうから、少し、怖い。それに。 「………年の割に無理して…とか…思われないかなぁ…」 あたしは高校を中退して、この芸能界に入った。だから、制服を着るのは……実に3年ぶりか。 「あぅ、どぉしよ、一気に老けた気がするー……」 そりゃ、みんなから童顔だとか中学生とか言われるけど!やっぱり、気になるものは気になる。だから今日はいつもより念入りにパックをしてみたり。
……そういえば、最近は『CROSS』と接触することが多いなぁ。 嬉しい反面、緊張するのも本当。
でも、やっぱり鼓動が高鳴る自分がいるのは……しょうがない、のかなぁ?
賑やかで、少し不安な。
あれ、こういうの、お母さんなんて言ってたかな。
―…あぁ、そうだ。
『アプリコット・クラウン』。
・
(と、とりあえずプロローグ的なものだといいな…!……文章力、どこに置いてきたんだろうと思うくらいのスランプ…orz)
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Re: 短筆部文集 // 3冊目 (マイペースに製作中!) ( No.99 ) |
- 日時: 2008/03/15 21:40:59
- 名前: 飛亜
- 「え?アクセサリーのデザインですか?」
私がまだ雑誌のモデルだった頃、舞い込んできた仕事。
「そーなの!凄いじゃない零!あの有名な“HemLock”とコラボできるなんて!」 雑誌の女性編集長がキラキラオーラを放ちながら言った。 HemLock…聞いたことがある。ゴシック系アクセのブランドで有名な… 「…ひとまず、どんなアクセをデザインしたら…」 「HemLockからはね、えーっと…あ あった!」 とごそごそと小さな紙を取り出し、零に渡した 「チョーカー、ネックレス、リングにカチューシャ、ヘッドドレス、眼帯、ブレスレット…を各3点ずつ!?」 あまりの多さに驚愕した。(数えると21点)こんなにデザイン描けるだろうかと不安になった。 「この前、Youthとコラボしたでしょ?それに目を付けたらしくて、依頼して来たわけ!」 (Youthというのは、女性に人気の靴のブランドのことで、零はマーチンブーツやニーハイブーツなどをデザインした)
「はぁ…頑張ります」 「頑張ってね♪店舗見に行ってもいいらしいから!」 「分かりました…」
バタンと会議室のドアを閉めた。
「…はぁ」 「なーにため息付いてんだよ 幸せ逃げるぞ〜?」 「…蓮」 そこに当時雑誌のメンズモデルとして活躍してた深堂蓮が現れた。 「はっはぁ…またコラボ?トップモデルは大変だねェ〜」 「五月蝿い あんただって世の中の女子虜にしてるくせに」 「なに嫉妬〜?」 「違う」 「げ、断言された…」 「とにかく私、デザイン考えるために店行くから じゃ」 ひらひらと手を振って別れた
――さて、デザインどうしましょ?
――― (番外編…のようなもの。深堂蓮はここでしか出てきません。ご注意を。)
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Re: 短筆部文集 // 3冊目 (マイペースに製作中!) ( No.100 ) |
- 日時: 2008/03/24 15:15:14
- 名前: 飛亜
- 「わぁ……」
店に視察にきたのだが、ため息が漏れるほど… 『カッコいい』
薔薇の飾りが付いた眼帯、蝶と十字架のペンダント、ベルトっぽいチョーカーには小さな鎖。 黒薔薇の指輪にはスワロフスキーが埋め込まれているとか。レースが付いた黒いヘッドドレスとセットのドレス。
『…欲しい』 欲望が湧いてしまう。魅入るほどキレイだった
「いらっしゃいませ…あら もしかして、月城零ちゃん?」 「え?あ…はい」 「編集長から聞いてるわ ゆっくり見て参考にしてね」 「はい」
見物していると、
「すいません!あの…月城零ちゃんですよね!?」 「はい…なにか?」 「あの…ファンなんです!サインください!!」 「いいですけど…」 色紙を渡されると(ファンは必ず色紙を持っているのか?と疑ったが)、サラサラとサインを書いていく 「きゃーありがとうございます!!」
パタパタと女の子は顔を赤くしながら、走って行ってしまった
「はぁ」 「トップモデルは大変ですね」 「はい…でも喜んでくれる人の笑顔を見ると…不思議と疲れとか吹き飛ぶんですよね」 「そうなの…あ そうだ これ 試着してみる?」 差し出されたのは黒薔薇のヘッドドレスだった 「はい」 「じゃあ私が着けたげる」 女性店員が零の頭にヘッドドレスを着け、黒いリボンを結ぶと… 「可愛い!似合うわよ!」 「ありがとうございます」 「次、これなんてどう!?」 店員さんが次々とアクセサリーやらいろいろ持ってきた
――私はお人形じゃありませんよ?
(連スレすいません!)
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或るミュージシャンの撮影中。 ( No.101 ) |
- 日時: 2008/04/01 23:23:05
- 名前: 沖見あさぎ
- 参照: http://tool-4.net/?mysugarcat
- 「ふざけんじゃねえよ」
カイが姿勢悪く座ったまま、地を這うような声で呟いた。その漆黒の瞳が攻撃的な眼差しで睨みつけるのは、壁に凭れかかって腕組みをしている青年……有末千景だ。千景は少しも顔色を変えることなく、余裕の表情のままカイを流し見た。紅いフレームの眼鏡の奥にある切れ長の瞳はまったく揺らいでいない。いつもと同じ柔和な表情、それが逆に冷たさを際立てていた。
「ふざけてるのはお前のほうじゃない? ……とっとと失せてくれないかな、不愉快だからさ」
さらりと毒を吐いて、千景がにっこりと秀麗な笑みを浮かべる。その表情に微塵の感情もなく―――それは却って、カイの不快感を煽った。カイが激昂したように立ち上がり、同時にけたたましい音を立てて椅子が倒れる。続いて、ドン、と机を殴ってカイは千景のもとへ大股で歩いていく。眉間に皺を寄せたその表情は、間違いなく憤怒に彩られていた。
「ちょっと、やめなって」 「またかよお前らっ!」
必死に止める俺とヒナタを振り払い。カイは千景を睨んだまま拳を振り上げ―――
「はいカットカットー!」
監督のその声で、全ての動きが止まった。途端にカイの顔から険しさが消えていき、千景はカイの腕から解放される。
「黒葛原くん、セリフ抜けてたよー」 「すんまっせーん、ド忘れ。なんでしたっけ?」 「『気に入らねえんだよ、お前! ナメてんじゃねえぞ!』でしょ」 「あ、そーだ。ありがとチカ」
にこにこと和やかに笑い会う二人からは、さっきまでの一触即発とした雰囲気は全く感じられない。そりゃそうだ、さっきまでのは全て演技なのだから。 ……俺たちが今撮っているドラマは、カイ演じる不良『圭(ケイ)』と俺が演じる圭の友人『風希(ふうき)』、ヒナタの演じるバスケ部部長『叶多(かなた)』の三人と、生徒会長である『千茅(ちかや)』(勿論演じるのは千景だ)が主要メンバーで、圭と千茅は犬猿の仲という設定なのだ。 このドラマはどちらかというと『イロモノ』の部類に入る(新人俳優を売り出すためだけに作られたような、中高生をターゲットとした)ドラマで、役名が俳優の名前と近いのもそれが所以だ。かなりの人気を誇っているらしく、ドラマは来月で終了するが映画の制作も既に決定している。仕事があるのはいいことだが、本来ミュージシャンを生業としている俺にとっては少し辛くもあった(『風希』のキャラが俺とまったく違う、というのも理由の一つだが)。 今日はその映画とこれから撮る10話目の台本を渡される日だった。スタッフの話によると、これから最終回までの3話までは今まで無かった『圭の恋愛』を突き詰めているらしい。恋愛、ということはもちろん女優を入れるつもりだろう。
「どんな子が来るのかなあ?」
やはり健全な男子というべきか、ヒナタは現場入りしたときから始終わくわくしている。しかし当事者であるはずのカイはあまり興味がなさそうだ。 (ただ表情に出してないだけかもしんないけど)(、こいつズレてるし。)
先程のシーンを撮り直し終わり(壮絶な喧嘩だったが二人とも傷一つない)(通称『王子』コンビだからか)(死んでしまえ)、現場監督からいよいよ収集がかかった。
「はいオツカレサマでーす。あとどれくらいかな、まあそれほど時間かかんないと思うけど気ぃ抜かないでね。じゃ10話と、映画版の台本渡しますよー。映画のほうは二冊あるから注意しといて」
いつもと同じく抑揚のない監督の言葉とともに、一人ずつスタッフから台本を計三冊手渡される。 俺やカイにも行き届くと、カイはさっそく台本を捲り始めた。それと同時にヒナタが、はいはい! と手を挙げる。
「松っちゃん! ゲストの女の子って、誰がくんのー?」
そう訊かれ、松っちゃんこと……女性監督松本咲は、にやりと笑った。
「聞いて驚けよ、てめえら。
圭の相手役、色崎奏見(いろさき・かなみ)を演じるのは――――鏡魅だ! 劇場版にも登場してもらう予定だぞ、喜べ男子ども!!」
途端、うおぉーっ! と現場が沸いた。さすが人気絶頂アイドル鏡魅といったところか、ここの男性陣からは人気が高いらしい。 しかしそんな男たちの歓声はもはや耳に入らない。俺は迷うことなくバッとカイを見た。
「…………」
カイはまるで今の言葉が聞こえていなかったかのように、平然と台本をめくり続けている。ボンヤリと頬杖をついて。 しかしその手によって隠された頬が、少し吊り上がっているように見えるのは気のせいか。
「――――ユウ、」
俺に見られていることに気が付いたようで、すっとカイが顔を上げた。 いつもと同じようにゆっくりと首を傾げ、ドルチェの声音で……呟く。
「キスシーンあったらどうしよう?」
そんなこと、知るか!
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先生、この学園の1番の七不思議は美形が多いことだと思います。 ( No.102 ) |
- 日時: 2008/04/02 17:45:25
- 名前: 深月鈴花
- 「ねぇ、ちょっと遊ぼうよ?」
暗い路地裏で、並ぶ3つの影。1番小さな影……あたしの腕を、1番背の高い男がつかんだ。 「やめてください!私急いでるんです!」 あたしが腕の痛みに唇を噛んだ刹那、目の前をもう1つの影が覆った。その影が人だと気づくのに、時間はかからない。 「何やってんだよ?」 口調は荒いが、声は甘く、一瞬聞きほれてしまう。 「関係ねーだろ?」 あたしの腕を掴んでる男と別の男が1度振り返り睨む、が。ギロリと鋭い視線で睨まれ、一瞬ひるんだ。 「ッチ」 1度舌打ちをしたのが聞こえ、あたしの腕が解放された。悔しそうに顔を歪ませ、踵を返して去っていく。 「あ、あの!ありがとうございました!」 少し怯えつつもペコ、と助けてくれた人に向かって礼をしたけど、その人はこちらに少し目線を向けただけで路地の外へ出て行ってしまった。
「はいオッケー!」
女性監督の声がスタジオに響いた。途端ガヤガヤと騒がしくなる。 凄い王道シチュエーションだなぁ、と内心苦笑しながら、ふぅ、とあたしは小さく息を吐いた。溜息ではなく、緊張を解いた証拠。 「カガミ演技うまいね?」 さっきの演技とはうって変わった口調で、圭……もとい、『CROSS』のカイが言った。 それに安心した…というのもおかしいけれど、あたしもホッとしたように笑う。 「演技っていうかあたしのまんまって感じですけどね!」 「あー、確かにそんな気がするー。」 ……そういう風にしてくれたのかな、とも思うけど。やっぱ役者としては素人だと思われてるのかなぁ。 でも一応……みんな知らないと思うけどミュージカル役者をしてたこともあるんだから。ちょっとそれは癪だなぁ、と思いつつも。 「カイさんはホント別人ですよねっ!うーん、才色兼備って羨ましいです。」 あたしがそう言った瞬間、カイが少し考え込むような仕草をした。 「んー半分素だしー?」 「え゛、嘘ですよね!?」 「うん、うそー。」 「えー!?」 頬を膨らますあたしをよそに、カイはくすくす笑っていた。 ………あぅ、この人には絶対叶わない気がする。 「鏡魅ちゃん、メイク直すからこっち来てー。」 声がした方を見るとメイクさんがあたしを手まねきしているのが見えた。 「あ、はーい。じゃあ、ちょっと失礼します!」 「行ってらっしゃーい。」
あたしがスタジオの奥へ歩いていると、それはもう芸能人のオーラは華やかそのものだった。この学園最高の七不思議は美形が多いこと。はいこれ決定。(←) ……同じ事務所の人も多いし、挨拶行けなかったからメイク直したらしに行こう。
「黒葛原くんと仲いいの?」 不意にメイクさんにそんなことを聞かれた。仲良く、見えてたの……かな? 「えと……んー、事務所の先輩です。」 「それ、応えになってないよね。」 ふふ、と顔見知りの女性のメイクさんは笑った。 「え、そうですかね?んーっと、じゃあ……『仲良くなりたい』、じゃ答えになりません?」
「…いいんじゃない?鏡魅ちゃんらしくて。……はい、終わり!」
「えへへっ、ありがとうございましたー!」
仲良くなりたい……か。や、そりゃ仲良くなれたら嬉しいけど! うーん、迷惑にならなきゃいい、なぁ…… ………や、基本だし、挨拶はしておかなきゃだよね!
・
>>98の続き
(更にスランプが酷いことに。1度はまったら抜け出せないのです……ごめんなさいっあさぎちゃん、これ続けるの無理そうだったら修正しますので!)
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Re: 短筆部文集 // 3冊目 (マイペースに製作中!) ( No.103 ) |
- 日時: 2008/04/02 23:20:44
- 名前: 飛亜
- それから帰宅して、自分の部屋でデザインを考えている
「う〜ん…ヘッドドレスとかはレースあった方がいいよね…ブレスもレース入れたりとか…ベルトみたいにレザー素材でもいけるし…」 時間は長いようで短い。それから3時間が経ってしまった。 「ふぅ ひとまず10点考えたけど…あと11点どうしよ〜…」 机にベタンとへばりつく。するとプルルル…と電話がなった。
「…はい」 『あーオレ!』 「…何 オレオレ詐欺?」 『ははは 違ぇよ オレだよ!蓮!』 「なんだ 蓮か」 『なんだってなんだよ〜折角デザインの手伝いしよーと思ってたのにぃ?』 「(ピクッ)…それホント?」 『ホントホント』 「…たとえば?」 『お 乗り気だな!まず…眼帯!黒でシンプルな感じがいーと思う 例えば…眼帯の下の部分に小っちゃい十字架というか…ロザリオみたいな感じ』 「…なるほど」 サラサラとデザインを描いていく。 「…次」 『豪く速いな…まぁいっか 次は……』
それからさらに4時間が経過した。気がつけば深夜になっている
「そっか…ありがと…ね」 『珍しーお前から礼なんて』 「五月蝿い 切るね」 『あ おい ちょっまっ…!』 「バイバイ」
ピッと電源を切る。そしてボフンとベットにダイブした
「…今日は…蓮に助けてもらってばっかだな…」
なんだろう 微妙な後悔が芽生えた。
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