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短筆部文集 // 3冊目 (マイペースに製作中!)
日時: 2007/09/17 15:49:49
名前: 黒瀬
参照: http://id29.fm-p.jp/8/ginduki/

短筆部文集もついに3冊目。さすが!
みんなイベントとか忙しいと思うけど、短筆部も見捨てないでくださいね?

さてさて。
連載も突発もオッケーな自由度高い企画なんだけど、一応ルールは守ってもらわないと。
じゃあとりあえずここでのルール、いきます!(箇条書きで)

・参加できるのは短筆部部員のみ。書きたいよ! って子は、まず入部届け(笑)を出してください。
・台本書き(情景を書いていない文章)禁止。
・文章は文字数がオーバーしない範囲。
・リクを貰ったり募集したりするのも可。ばんばんしちゃってくださいな。
・ギャル文字などは厳禁。誰でも読める文を書いてくださいね。
・一次創作・二次創作どちらでも。ただ、(ないと思うけど)年齢制限のかかるようなものは書かないこと。
・リレー小説のキャラ、自分のオリキャラを出すのは一向に構いません。でも、他の方のキャラを借りるときはちゃんと許可を貰ってからにしてくださいねー!

間違ってもこちらには参加希望などを書かないでくださいますよう。
ではでは、どうぞー!

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願い (BL要素含(土沖)/後編) ( No.14 )
日時: 2007/11/02 20:35:10
名前: 黒瀬
参照: http://id29.fm-p.jp/8/ginduki/




「……だ、れか……いる、んですかィ―――?」



そうか。こいつは、目が見えないんだ。
呆然とした意識のなかで暢気にそんなことを考える自分がいた。

瞼を開けた総悟の瞳は、光が欠乏していて、まるで別人のようだ。
濁ったうつろな目が彷徨う。俺を探しているのか。


「総悟……」


不覚にも声が震えた。
総悟が、俺(の声がする方向)を見るが、視線はいっこうに交わらなかった。
探るように総悟が視線を迷わせる。


「ひじ、かたさ、ん、来てくれたんですかィ。
 ……俺、変、なんです。身体は動かねェ、し、目を開けても……アンタの姿は見えねーし……」


一言一言、噛み締めるように総悟が言う。
自分の身に起こっていることに気がついていないのか。
当然といえば、当然だ。

けれど、何もいえなくなった俺とは裏腹に、聞こえてきたのは力のない笑い声。


「は、は………うそ、ですよ。なんとなく、わかりまさァ。
 俺、もう、生きてるだけで……精一杯、なんですね」


今度こそ、息が止まるかと思った。(やはり俺を恨んでいるだろうか。)


「そ、う……」
「土方さん。俺の最後の、我儘、きいてくれませんかィ?
 どう、せ、もう副長の座ァなんて、手に入らない。だから、代わりに。
 お願い、しまさァ」


どうして。
どうして。
何故、そんな言葉を俺に言えるのかわからない。
俺の火遊びの代償が、お前に、最悪の形で降りかかったのに。


「それ、を、叶えたら……俺は、おまえを置いて、忘れて、
 どっかにいっちまうかもしれねェぞ……?」


みっともなく震えた声で、言葉だけは、冷酷な「鬼」の台詞を選ぶ。
総悟がフッと息で笑った。


「土方さんは、そんなこと……しやせん、よ。
 でも、念のために……一応、絶対叶えられない、願いにしときやす」


言うな。
言うな。
だけれど、嘘は俺の十八番。


「……わかった。言ってみろ」
「俺の、――俺の願いは………」






その願いを聞いてから三ヵ月。
考えることを止めてしまった総悟とは会話していない。

ただ。
総悟の要求に縛られた俺は、総悟から離れることは出来なくなった。
毎日、毎日、うつろな総悟の瞳を見つめる。
勿論。真選組副長のポストは、未だ俺のものだ。

けれど、思う。
もしかしたらこの『願い』は、総悟からの細やかで、最初で最後の優しすぎる復讐だったのかもしれない。











俺の、願い。

土方さんが、
これから、
ずっとずっと、
俺の時が止まるまで、
止まっても尚、
俺だけを、


愛してくれること。









end.


(シンデレラは貼り付けた笑顔と着飾ったその姿で優しくわらう) ( No.15 )
日時: 2007/11/19 18:18:46
名前:
参照: http://www.geocities.jp/akatukiquartet



――――――――彼女は、「外見を着る」。


「服を着る」のではなく、「外見そのもの」を着ている。

今日の彼女は(個人的な価値観を基にするならば)清楚系。

ふわりとしたオフホワイトのワンピースに真っ青なカーディガン、足元は白いパンプスで。

流れるような黒い髪を腰くらいまで伸ばして。

お出掛けには白いフリルの日傘を差しそうな。

澄ました顔で本を読む彼女。

初めて彼女を見る人は、彼女を名前と共に、「清楚系の女の子」として認識し、記憶するだろう。

けれどそれは違う。

一日前に彼女に会ったならば、彼女を名前と共に「姉御系の女の子」として認識し、記憶したはずだからだ。

そう、彼女は毎日服を変え、髪型を変え、メイクの色を変え、口調すらも変えて。

そうして彼女は、「外見を着る」のだ。


[ Chapter.1-1 ]



「――――――――――<サガミヤカレン>」
「・・・・・のわっ」
横から声をかけられ、机に座り前方を眺めていた少年は吃驚して思わず飛びのいた。
「なーに驚いてんの、<アカツカスズト>くん」
「ちょ、先輩・・・・・」
<アカツカスズト>―――――赤塚鈴人は、話しかけてきた少女の方を見て言う。
少女は今まで鈴人が見ていた方向をちらりと見、それからにやりと不敵に笑った。
「なーるほど、例の<変わり者>ね」
「・・・・・・勝手に人の心理読まないでくれます?――――――<シジョウインマコ>先輩」
わざとらしく、フルネームで呼んで。
けれど少女――――四条院眞子は、彼の恨みがましい発言をさらりと流して言う。
「へー、なるほどねぇ、鈴くんってばあんな子が趣味だったの」
「人の話聞いてくださいよっ」
「ふーん、サガミヤかぁ」
鈴人の話を殆ど無視して、眞子は胸ポケットからシャープペンシルを取り出し鈴人の机に何やら書いた。
「凄いよね、この漢字」
そこには、話題の<変わり者>の少女の苗字、<嵯峨雅>。
「・・・・へぇ、こう書くんですか」
「何、あんた知らなかったわけ?」
「転向してきたの、最近ですし。そんな難しい漢字、印象に残るだけで書けやしません」
サガミヤ、サガミヤと机に書かれた漢字をさらにシャープペンシルでなぞりながら鈴人が呟く。
その姿を微笑ましげに見つめて、眞子は口に手を添えると、前方に聞こえるくらいの声で叫んだ。

「おーい、サガミヤちゃーん。お呼びですよーっ」
にっこりと、しかし明らかに悪意と好奇心を含んだ笑顔で微笑んで。
そして、黒髪の綺麗な少女は振り返った。
「・・・・・・・・・・何」
――――――イメージが一瞬で崩れ去るくらいの、不機嫌な顔を浮かべて。



――――――――――――――――――――――――――――――
前スレであったシリーズ、ちょっと書き直したので載せ直し。
正式タイトルは「偽りシンデレラ」です(書け)
(心に穿たれた傷穴を、癒すものはなにもなくて) ( No.16 )
日時: 2007/11/19 18:19:40
名前:
参照: http://www.geocities.jp/akatukiquartet

[ Chapter.1-2 ]


「・・・・・・・・・・何、眞子先輩」
「あーもーやだなぁカレンちゃん、そんな怖い顔しないでーっ?お姉さん怖いー」
「・・・・・・・・・・・・殴り飛ばして、いいですか」
思いっきり顔を不機嫌に歪ませて暴言を吐く、想像とはあまりにかけ離れた少女の姿に鈴人の思考は一瞬フリーズする。

(ちょ、ちょっと待てよ・・・・・?)

本来なら、今日は「清楚系」の日。
にこやかな笑顔を浮かべて、絵に描いた大和撫子の様に大人しくしているはずだった。
「・・・・・・・・・それで、何なんですか?別に意味無いとか言ったら怒りますよ」
「やだなー、ちゃんと意味あるからね?あのね、この人がカレンちゃんと話したいんだって。ね、鈴くん?」
明らかに好奇心と悪意の込められた笑顔を浮かべて、眞子は言う。
カレンはうざったそうに鈴人を見て、それから面倒臭そうに言った。
「・・・・・・・・・・・・・何、」
「え、えと・・・・・」
東洋人離れした端正な顔立ちの瞳に射竦められ、鈴人はどもりつつ言う。
「・・・・・何で、いつも違う格好とか性格とかしてるのかなー、って」
放たれた言葉に、カレンは一瞬動揺したような素振りを見せてから、無表情になって唐突に席を立った。
鈴人を見下すように見て、嘲笑のような笑みを浮かべて。
「さぁね?<愛想の良い性格の私>の時にでも聞けば、解るんじゃない?」
言ってから、足早に教室を出ていく。
吐き捨てるように言った言葉は、まるでカレン自身に向けられた自嘲のようだった。


「・・・・・・・・・・眞子さん、あれ・・・・・」
「・・・・・あれが<本性>、いや<四条院眞子に見せる、本性と偽った性格>、かなぁ?
 あの子、あたしにはああいう態度なのよね。・・・・・・本性かと思ったけど、あれさえも偽ってるのかもね?」
含んだような笑みを浮かべて、眞子は言う。
「吃驚した?でも驚いたのはこっちよ。いきなりカレンちゃんの核心突くんだもんね、鈴くんってば」
核心、という言葉に疑問を浮かべる鈴人に、眞子は言い聞かせるように呟く。
「・・・・・・決まってるでしょ、この学校、いやこのクラスに在籍している人よ?
 変な言動や奇行があったんだとしたら、原因は決まってるわよ。・・・・・・・・・・・過去のこと、よ」
はっとなった鈴人に、眞子は「馬鹿ね、」と呟いて。
窓の外を見やり、目を細める。
「あの子も何かあったのよ。何か辛いことが、あったのかもしれないのよ。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・あんたとあたしみたいに、ね」


―――――――私立彩崎(さえざき)高校。
声優・俳優を目指す<芸能科>、調理師やパティシエなどを目指す<調理科>。
その他にも<服飾科>や<美術科>などの専門職を目指す科が中心となっているこの高校で、一つだけ異彩を放つクラスがある。
―――――それが、<総合科>。
学年ごとに一クラスずつあり、単位制で高校卒業資格が取得できると銘打っているこの科。
しかし実態は、高校中途退学者や登校拒否児、その他数々の理由で普通の高校に通いにくい生徒を収容している。
赤塚鈴人・嵯峨雅カレン・四条院眞子は、その総合科である1年A組に通っている。

「―――――――――<過去を聞かない>、<過去に触れない>、<過去を詮索しない>。
 総合科で三年間穏便に仲良く過ごす為の最低限三か条、忘れた?」
「・・・・・・・・・すみません、」
俯く鈴人に、眞子は肩を竦める。
「あたしに言わないでそれはカレンちゃんに言ってよね。・・・・・まぁあたしも、訊きたいと思ってたのは確かだけど」
「・・・・・・そう、なんですか」
「・・・・・・・・・・まさか、あそこまで動揺するとは思わなかったけどね。
 この学校で有名になるほどの事やっといて、いざ正面きって訊かれるとああいうリアクションするとは」
事実カレンの<外見を着る>と形容される行為は学校中周知の事実であり、けれど総合科の三か条の掟の事もあり誰も触れないでいた。
「入学してきた当初は色々ありもしない面白い憶測が飛び交ってたんだけどね?
 身長170近くあるから迫力あるし人寄せ付けない雰囲気出してるし無愛想だし。
 数ヶ月もしたら、皆あまり気にしなくなってきたのよ」
――――――――――「総合科の子だから」、と。
「・・・・・・・・・・・・・知りませんでした」
「しょうがないわよ、鈴くん転校生なんだし」
鈴人は二学期の途中から編入し、一ヶ月経つ。
カレンのことはクラスで見ているのと少しの噂で知っているだけで、事情は殆ど知らないに近かった。
目の前の少女、四条院眞子の事も殆ど知らないに近い。
昔何らかの事情があって、一年ダブって鈴人達より一歳年上なのに同じクラス、だということだけしか。
「・・・・・・・・・まぁ大丈夫よ、明日からまたあの子皮被るだろうし。
 ちょっと確執が残るくらいよ、心配ないわ」
わざと明るく言う眞子に、鈴人は力なく微笑んだ。


>>15の続き)
(氷ノ少女、闇ノ女、相容レズ、刃モ引カズ) ( No.17 )
日時: 2007/11/19 22:01:53
名前: 春歌

紅ト蒼、海ト空、光ト闇

似テイルヨウデ相容レズ、違ワズニ交ジリ合ワズ
ソレガ私達の関係性・・・

「あれ?秘抄じゃない♪」

わざとらしく、それで居て憎たらしい猫なで声で
私の名を呼ぶのは私の天敵、かつ義姉の流紅

「おはようございます」
「おっはよ〜ん♪」

ニコっと作り笑いで挨拶を返すと
彼女も作った笑いで挨拶を返す・・・・

「今日、休み??」
「えぇ、そうですよ『お姉さん』」

私はわざとらしく彼女の事を「お姉さん」と呼び挑発する
彼女は笑みこそ崩してないが、すこし驚いている

「奇遇ね?私もなのよ・・・」

さっきまでとは違う鋭い笑みを浮かべながら
ゆっくりと、時間をかけて言葉を紡ぐ、、、、

秘抄は何も言わず立ち上がった
流紅もそれと同様何も言わず立ち上がる
二人で家を出ると、町外れの工事が中断したマンションの建設地に移動する

これから、自称もっとも酷い姉妹喧嘩が始まるー・・・
中国人と眼帯をした男とナルシストと亡霊のような男 ( No.18 )
日時: 2007/11/20 19:48:45
名前: 色田ゆうこ

「こら、たかにょ! またそんなにピアスつけてー! 校則違反ある!」

漆黒のおかっぱ頭を元気よく弾ませながら前方を指差した苺建は、いつものように正義感あふれるポーズと表情で、叫んだ。
左腕にある真っ赤な腕章には、威厳のある明朝体で「風紀」と記されている。
指差された男子生徒、たかにょ――もとい、鷹野色は、一瞬で苦い顔になった。
「またお前かよ、」
だるそうに上体をゆらりと傾げて、ため息のような気の抜けた声を出しながら重い手つきで頭を掻く。
「その前髪もいい加減切るよろし! 暑苦しい!」
銀色の大きな鋏を取り出した彼女に、「お前の頭で揺れてるその蓮の花はどうなんだ!」と言い返したいのは山々だったが、
苺建の背後に見覚えのある耽美なオーラを撒き散らす男の姿が見えたので、何もいわずに口を閉じた。
色は思う。最悪だ。
「ええやんええやん、色にゃんに何か言ったとこで今さら何も変わらへんよ」
胡散臭い流暢な関西弁を喋りながら美しい碧眼を片方ぱちりと閉じてみせて、彼・梁嶋晴千夏は現れた。
後ろからわしゃわしゃと黒髪を乱されて、苺建は頬を膨らませる。
(ああ、背後に薔薇が見える……)
呆れてため息も出せないまま、色は目を細めた。
気分としては、フランス料理フルコース。濃い。何なんだそのキラキラ感は!
「むう! はるちか、お前が一番さいあく……もう、存在自体が校則違反ある! 何で在学できてるあるか!」
じたばた暴れようとするところを――、耳にはピアスをして手には指輪を嵌めた、
美しい金髪をきらめかせる青い目の――「全身校則違反」に押さえつけられた彼女は、悔しそうに無意味なうめき声を上げた。
晴千夏は薔薇色の唇を笑みの形に歪めて、そんな苺建の様子を楽しんでいる。


「すみません鷹野さん、」

突如、首筋にぬっと現れた冷たい感触に、色は悲鳴を上げた。静かで落ち着いた……感情の無い声に振り返る。
なんだ、弓束か、とほっと息をつくと、彼は「はい弓束です」といちいち答えて、そっと首を傾げた。
気配を全然感じなかった、と色は思った。少年のこの青白い肌と黒すぎる目に、不気味なものを感じるのはしょっちゅうだ。
恭しくその場でお辞儀をした彼の腕には、2つ腕章が付けられている。
1つは赤い、苺建と同じ「風紀」の腕章、そしてその下のものには、やけに達筆な字で「蛍」と書かれていた。
「苺建さんを、」――――……恐らく、「見ませんでしたか」等と続くはずだった弓束の言葉は、未だ晴千夏に押さえつけられている苺建の、
「お前が生徒会長なんて世の中どうかしてるある! 成金! ナルシスト! 死ねっ!」
という激しい抗議にかき消された。
深い闇のように光の見つからない瞳を瞬かせて、弓束は視線をゆっくりと彼女の方へ移す。
その傍らで、色は苺建の言葉にうんうんと大きく頷いていた。
「苺建さん、」
「あっ、ホタル!」
来たあるか、早く助けるあるー! 
同じ腕章を持つ仲間の登場に目を輝かせた苺建は、一層大きく手を振り回した。
小柄なので低い位置にあった細っこい肘が、丁度晴千夏の脇腹を直撃する。
あだっ! 変な悲鳴をあげて、晴千夏が前かがみになる。逃げ出してきた苺建に、弓束が音も無く近づいた。

「ここにいたんですか。捜したんですよああまた晴千夏さんに楯突いて……
 先輩に注意を出来るのも素晴らしいことですがほどほどにして下さいねあ
 と先輩には敬語じゃないとだめですよ何度言ったらわかるんですかここに来
 た目的は彼らへの注意じゃないでしょう」

ああ、ケイちゃん、相変わらずやねーと、晴千夏が乾いた笑いをたてた。
いつの間にか色の隣に来て、涙目になって脇腹をさすっている。彼の唇から活字が次々とあふれて出て、
空中に整列していくイメージだ。息継ぎなしでしかも無表情だから、まるで機械そのもの。
本気でロボットに思えてくる。今の技術ならつくれそうな感じ……色はふとそう思った。この肌も硬そうだ。
「ほんま、あの肺、どうなってんやろ……」
4つあるかも知れんねえ。
遠い目をして夢見心地で呟く晴千夏に、打ち所が悪かったのかと色は少し心配になった。
彼が背負っていた薔薇は、チープな「お花畑」と彼の頭部を巡回する「小鳥さん」に成り代わっている。
更に「顔色悪い分肺が発達してるんちゃう?」なんて、拳を手のひらに乗せるジェスチャーつきで真面目に言い始めたので、
ああなんだこのカオスな空間は! と叫びだしたくなるところだった。
ロボット・ユヅカがくるりと振り向いたのはその時だ。相変わらず音の無い。
チャイナ娘への説教はひと段落したようである。

「鷹野さん晴千夏さん――このイヤリング、見覚えあります?」

弓束の真っ白な指先にはさまれて、銀色の小さなイヤリングがきらりと輝いた。
Re: 短筆部文集 3冊目 (行事があってもマイペースに製作中!) ( No.19 )
日時: 2007/11/21 19:59:48
名前: そら
参照: http://yaplog.jp/sora_nyanko/


ガリッ……ガリッ……

いつか誰かに訊ねられた、「どうして?」と。
僕は嘲るように笑った。

「     」

何を答えたのか僕は憶えていない。


……ガリッ……ッ

フィルターがかかったかのように曇った視界。
終わりなんて知りたくなかった。
目を瞑ったまま体がその場に崩れ落ちるのを感じた、不思議と何の痛みも感じない。
感覚のない手を地面に降ろす。
いつか誰かに訊ねられた、「どうして?」と。
僕は嘲るように笑って

何を言っただろう。
誰に、言っただろうか。


ただひとつだけ憶えていることは、何度も何度も、


「言わなければ……よかった、なんて」


いつか誰かが訊ねるだろう、「どうして?」と。
そうしたら今度こそ教えてあげるから。
今度、こそ……。
そう思いながら最後に刻んだ。

ガリッ……


どうしても言いたくて、言えなかった言葉を。
(聖女の微笑みは、苦難の証) ( No.20 )
日時: 2007/11/21 22:39:06
名前:
参照: http://www.geocities.jp/akatukiquartet

[ Chapter.1-3 ]


「おはよう、鈴くん」
「あ、おはようございます眞子先輩」
教室に入るなり、窓際の席に座っていた眞子が声をかけ、手を振ってくる。
それに軽く応え、鈴人は眞子の斜め前の自分の席に腰を下ろした。
「あ、カレンちゃんおはよー」
いきなり眞子がわざとらしく言うので、びくりとして教室の扉の方を向くと、案の定登校してきたカレンと目が合う。
今日は黒髪をポニーテールにし、赤のロングカーディガンに黒のカットソー、スキニージーンズにハイカットスニーカー、という出で立ち。
カレンは眉ひとつ動かさずに物凄いスピードで顔を反らし、教室の前方にある自身の席に着いた。
「うわわーっ、不機嫌モード発動だよあのこ」
後ろから明らかにわざとらしく眞子が言う。
「・・・・・・・・眞子先輩、面白がってません?」
溜息をつきつつ鈴人が言うと、眞子はふふ、と笑う。
「人間観察と言って欲しいなぁ、鈴くん。ただの野次馬みたいに解釈しないでよ?」
「性格悪いなぁ・・・・・」
「よく言われるーっ」
飄々と眞子は言ってのけ、それから鈴人の方へ椅子を寄せて言う。
「・・・・・・・・・・で?どーしたのよ、悩める青年」
にっこりと言う眞子に、鈴人は再び溜息をついた。
「俺・・・・謝んなきゃいけないですよね、カレンさんに」
「あー・・・・・でもどうなの、カレンちゃんの態度」
「駄目です、目も合わせてくれません」
「うわ凄ーっ、カレンちゃんキツそうだもんねー」
眞子は言い、それから優しく笑った。
「・・・・・・・・・でも、過去にもう一度触れることになるわよ?
 カレンちゃん嫌そうだったじゃない、それでも?」
鈴人は一瞬言葉を詰まらせ、それからゆっくりと言った。
「そうですけど・・・・・でも。
 でも、やっぱり・・・・・このままじゃ、いけない気がして。
 俺だって昔のこと詮索されるの嫌だし、やっぱり俺他人にとって嫌なことしてしまった、から。
 ・・・・・・・・・・謝って、きます」
「・・・・・・そう、頑張ってらっしゃいね」
あの子不器用だからさ、と眞子は笑う。
眞子の過去を、鈴人は知らない。
詮索しようとは思わないし、あちらもこっちの過去を知らないからお互い様だ。
互いに歩み寄りすぎず、傷を広げないように努力している。
けれど、先程の言葉を呟いて、笑った眞子は。
まるで過去の自分を重ね合わせるように、笑っていた。



>>16の続き)


狭間ノ家 : 配電室 ( No.21 )
日時: 2007/11/25 12:24:23
名前: 沖見あさぎ(元:黒瀬)
参照: http://id29.fm-p.jp/8/ginduki/

「あれ、遊、なにやってんの?」

帯刀蒼伊が敷居をくぐって部屋に入ると、すでに先客がいた。
鬢の長い黒髪に、見慣れた紫のメッシュ。薄暗い部屋のなか、遊こと帯刀遊紫が振り向いた。
地下室への階段を降りてすぐのところ。土間のような造りになっていて、四方八方へと廊下が続いている。
蒼伊は帯刀の中では古参なほうだが、未だこの地下の間取りを知らなかった。
帯刀一族七不思議、果てしなく続く地下室。
(そりゃあ普通なら果てがあるのだろうけど、あまりにも広すぎて奥まで行ったら二度と帰ってくれなくなりそうなのだ)
そんな土間で、遊紫はにこりと猫のように笑った。
彼の周囲には紫色の蝶が二匹、寄り添うように飛び交っている。(遊紫の眷属だ。)

「灯りをとりにきたのっ」
「……ああ、じゃあ、配電室?」
「そおだよ、」

遊紫が頷く。
ロクちゃんが、持ってこいって。快活な声が静謐な地下室に響き渡った。

「奇遇だね、僕も配電室に行くところなんだ。花鳴ちゃんに頼まれてね」
「ふーん。じゃあ、一緒に行こっ」

元気よく言い放つと、既に遊紫は歩き出していた。
子供のような仕草の彼であるが、暗闇は全く怖くないらしい。


配電室は、狭間の家地下の廊下を右に曲がって突き当たりにある。
銀がばら撒かれた白い襖(こんなところまで凝っているのだ)を開ければ、青みがかった浄闇が広がっている。
其処を壁伝いに進んで、ふいに壁がなくなったと同時、目の前に仄かな光がぽつぽつと現れる。
それが合図だ。
遊紫は配電室がひどく気に入っているらしく、今にも走り出しそうで、それを蒼伊が彼の腕を掴んで制止しなくてはならない。

「ついたあっ!」

ゆっくりとしたスピードで数歩歩くと、ぶわっと、一気に目の前が明るくなった。
見上げると、暗い部屋中に、天井に、壁に、床に、星のような光の玉が点在していた。
紅、朱、橙、緑、藍、白、紫。
様々な色が、様々な大きさで、様々な場所に浮かんでいる。
籠に入っているものもあれば紐でくくられているものもあるし、自由に飛び回っているものがある。
これらが、電気の通っていない帯刀屋敷の光源なのだ。


「さてと………どれが花鳴ちゃんの言ってたヒカリかな?」


蒼伊が顎に手をやって辺りを見回すと、遊紫が緑の光に向かって駆け出していくのが見えた。




(緑路郎さんがミドリ好きだからってそれが合うとは限らないんだよ遊!)







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帯刀と光にも相性がある。
Re: 短筆部文集 3冊目 (行事があってもマイペースに製作中!) ( No.22 )
日時: 2007/12/08 00:55:22
名前:
参照: http://yamituki.blog.shinobi.jp/

――アーキュラン・モーリヒィ・ブルドン……ね。

「どっかで聞いたことあんだよなぁ、この名前」

前払いとして報酬を半分受け取り、目標が写った写真と紙切れを手に、少年――リエン・ディ・セイリアは夜の路地を歩いていた。
小さく掌の大きさに破かれている紙にはこの路地に至るまでの道のりが記されている。
昼間、依頼者から請け負った"暗殺"依頼をこなすために、まずは目標の居場所を突き止めなければならなかった。
写真を片手に情報を集めると、どうやら相手は細い路地裏の借家で寝泊りをしているらしい。

『その写真なんですがね、二、三年前のものなんですよ』

別れる前に依頼者に言われたことがふと頭を過ぎる。
依頼者の言うとおりならば、今からリエンが会いに――いや、殺しに行く相手は同年代の少年。
本来なら"殺し"など、それも同年代の、胸が痛くなるには十分すぎる行動も、今のリエンにとっては何の感慨もわかない。
ポケットから片手を取り出し、もうとうの昔の黒く染まってしまった手を見る。

――いつからなんて、自問しなくても解るよな

ぎゅっと拳をつくると、写真がくしゃくしゃになり目標の顔が歪んだ。

「……よっし、行くか」

まるで猫のように金色に光る片目で目標の場所を最終確認し、若い万屋は細い路地を駆け出した。
彼の後姿に、迷いは無い。



「此処か」

目的地と思われる借家を前にし、リエンは一通り家の造りを把握した。
窓から中を確認すると目標は既に寝息をたて、呆れたことに窓の鍵は開いていた。
今から殺す相手とは言え無用心だなと感想を漏らし、リエンはそっと家の中に侵入する。
目標まで近付き、写真と顔を比べた。
……間違いなく、アーキュラン・モーリヒィ・ブルドンという少年だと確認すると、彼の横に腰を下ろし額に銃口を押し付けた。

「…………」

何か最後に、言葉を掛けようと思ったが見つからない。
だから無言で、リエンは引き金を、躊躇いなく、引いた。



>>5の続き)
ドルチェキャット! : 帯刀学園 ( No.23 )
日時: 2007/12/08 20:03:04
名前: 沖見あさぎ
参照: http://id29.fm-p.jp/8/ginduki/

「あ、猫だ」

真冬にも関わらずアイスバーをなめていた宵永遊紫は、不意に空いたほうの手で茂みの辺りを指差した。
釣られて夏野瑶廉と近江蒼伊がそちらを見ると、茶色い縞々の尻尾がちらりと見え隠れした。
昼休みの裏庭には三人しかいなかった。普段なら他にも生徒が多数いるものだが、今日は一段と風が冷たいため、みんな外に出るのが億劫なのだろう。
実を言うと瑶廉や蒼伊も裏庭に出るのを渋っていたが、子供は風の子だよ! とわけのわからないことを言う遊紫に嗜められ此処に来ていた。

「やっぱり寒いって、ちょっと夏野先輩、上着貸してよ」
「誰がテメェなんかに貸すかってんだ、バーカ。凍死しちまえ」
「へえ、そういうことゆうんだ? 昨日コンビニに買出し行ったとき、足りないお金を足してあげたの誰でしたっけ」
「………しらねーよ、そんなこと」

吹きすさぶ風に首を竦めながら昼食をかっこむ二人を余所に、遊紫は楽しそうに猫へと近寄っていった。
制服もシャツもズボンに入れていないため、歩くたびに制服のしたの紫色のシャツがチラチラと見える。
彼はかなり大胆な歩き方で茂みへ歩み寄っていたのだが、何故か猫が逃げる気配は無い。
それどころか、遊紫が手を伸ばすと、猫は自分から茂みを出てきた。茶色と白の縞々の身体が見える。
遊紫は慣れた手つきで猫を抱え上げると、瑶廉と蒼伊のもとへと戻ってきた。

「ねえ、こいつ可愛いよ。飼おうかなあ、」

にこにこと笑いながら遊紫が座りこむ。野良猫を見つけると必ず言う台詞だ。
可愛いから、という理由で持って帰ることが出来るなんて、さすが天下の宵永財閥御曹司だな、と蒼伊と瑶廉は卑屈な気持ちになる。
そういう二人も特に貧しい家庭で育ったわけではないが、宵永の名に敵うほどではない。

不意に猫の喉を撫でるのをやめると、遊紫はついと顔を上げた。
いつの間にかピンク色のアイスは彼の口内に消え、棒だけが彼の手の内で弄ばれている。



「そういえば、今日、部活に新しい奴が入るんだって」



40分の休み時間の終焉を告げる鐘が、無機質に鳴り響いた。


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