Re: 短筆部文集 1冊目 (へたれ部長と神部員がお送りします。) ( No.82 ) |
- 日時: 2007/06/24 17:06:26
- 名前: 玲
- 参照: http://monokuro00labyrinth.web.fc2.com/
- 「カナヤくん」
振り向いてそう僕に微笑む彼女の顔は綺麗で、この世のものとは思えない程美しくて――。
僕と彼女が知り合ったのは今年の春だった。 あの日家に帰った僕の目に映ったのは倒れている母親。 鞄なんか放り投げてすぐに母の元へ駆け寄った。意識があった母は、呻き声を上げながら僕に向かってこう言った。
「腰が……」
…………。 ………………母さん?
母の症状はただのぎっくり腰で。 けれどそれで病院に行ったら、元々風邪を引いていた体で無理をして働いたことでの肺炎が発覚した。過労もあるとのことだ。 母は数日間入院することになり、僕は学校帰り当然のように見舞いに行っていた。 そこで、彼女に出逢った。
見舞いが終わり帰宅しようとしていた僕の目に飛び込んだのは、病院の裏庭に座っている一人の少女。 青い芝生の上にぺたんとお尻をつけている少女の空間が、僕には現実離れしているように思えた。 彼女の周りにはモンキチョウが数羽飛び交っていて、人差し指には小鳥がとまっている。 まるで蝶や鳥と話しているかのように語りかけ、微笑み、笑っていた。 ふと、彼女が僕に気付く。それから優しく微笑んでくれた。 突然のことで激しく同様していた僕は何か言いかけた口を閉じ、真っ赤になって一礼し、その場から走り去ってしまった。
そんな出逢いがきっかけで、あれから僕と彼女は病院で逢っては話をするようになっていた。 彼女は入院患者で、小さい頃から入退院を繰り返し今回ではもう半年も入院しているという。 母が退院してからも僕は病院に通い続け、幸せそうに笑う彼女の隣に座っていた。 ずっとそんな関係が、続くと思ってたんだ――。
「ねえカナヤくん。昨日は星がとても綺麗だったのよ」 「昨日の夕焼けは今までで一番の美しさだったと思うわ」 「ここから見える海はいつもキラキラ光っているの」 「学校帰りの小さい子たちがね、とっても楽しそうに遊んでいたわ」
彼女は毎日その目で見たことを僕に話してくれた。 生きていて当たり前のように起こることをとても嬉しそうに話す彼女は本当に生き生きしていた。 そしてその日も彼女は言ったんだ。
「お花を摘んで自転車に乗っていた人が転んでしまったの。痛そうだったけど、その時宙に舞った花びらがとても綺麗だったわ」
どうして気付いてあげられなかったんだろう。 毎日毎日彼女は世の中を目にしてはそれを僕に話してくれた。 それが、それだけが彼女の生きがいだったことに……。
次の日病院を訪れた僕はいつものように彼女の病室に赴いた。 でもそこは空で、ベッド以外何もなくて――。 どうしたのかと近くにいた看護師さんに訊いてみると、とても言い辛そうに顔を歪めた。
「…………嘘だ………………」
彼女は死んだ。 僕には言っていなかったけれど、彼女の目はだんだん視力が低下する病気で、昨日には殆ど見えていなかったという。 今日の朝目を覚ました彼女は暗闇にいて。 まだ夢の中の方が彼女に光を差し伸べていて。 幻想に取り付かれ、空気の流れを感じる窓に近づき、そのまま逆さまに――。
「カナヤくん」 今でも夢の中で僕の名前を呼び続ける彼女に、僕の姿は映っているのだろうか……。
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(銀魂 沖田結核ねた5。) ( No.83 ) |
- 日時: 2007/07/01 16:33:27
- 名前: 黒瀬
- 参照: http://id29.fm-p.jp/8/ginduki/
- 「………」
その場所に立つと、自然、僕は言葉を失くした。 僕だけじゃなく、神楽ちゃんも、沖田さんも同様に。 目前に広がる景色を、どこか唖然としたように見詰めていた。
神楽ちゃんに連れられて僕らがやってきたのは、町外れにあるちいさな丘だった。 まるで野原のように草の原が続き、ゆるやかな斜面の向こうに、神楽ちゃんの云う「最高の景色」があるという。 でもやっぱり沖田さんは、丘を登るのは随分辛そうだった。 手を貸そうかと思ったけれど、「余計なことすんじゃねーや」と制された。 荒い息を堪えつつ歩き続ける沖田さんに、少し視界を潤ませながら、僕らも上へ上へと進んでいった。 そして、今、丘の上。
「、す、ごい……っ」
無意識に僕は声を漏らしてしまった。 丘の上には、一本の杉の木が立っていた。それから先はまた下へと斜面が続いていて、そこをずっと進めばかぶき町のほうに戻れるようになっている。 木の下に立つと、そこから、町全体が見渡せた。 昼から夕へとうつろい始めた、橙色のかぶき町。 屋根、路地、人々。全てが霞んで、光に溶けているみたいだった。 遠くに聳え立つターミナルさえ、まるで世界に穿たれた水晶のように美しく見えて。
沖田さんは肩で息をしながらも、「すげェなァ」なんて僕に相槌を打った。 神楽ちゃんは誇らしげに胸を張っている。 「デショ!? この前定春の散歩してる時に偶然見つけたアル。 その時は真っ昼間で空も真っ蒼だたヨ。……でも、オレンジの風景もすごく綺麗ネ」 いつになく穏やかな声音。沖田さんもその声を聴きながら、心地よさそうに目を細めて街を見下ろしていた。 「どうしても、ソーゴに見せたいと思ったのヨ。 こんなキレーな景色見れずに野垂れ死んだら、かわいそーだと思ったアルネ」 いつもと同じ減らず口で神楽ちゃんは言う。 沖田さんがふと、思い出したように軽く咳をした。 口に手をやりながら、沖田さんは小さく笑う。 「……最期に見たかぶき町の景色が、こんなに綺麗なモンだとは思っても見なかったなァ。 ありがてェや」 自嘲気味に、冗談を軽く言うかのように、沖田さんがさらりとそんなことを言った。 すると途端。神楽ちゃんの眉が顰められ、表情が哀しげに苦しげにゆがむ。 それから、ソーゴ、と彼の名を呼んだ。沖田さんが神楽ちゃんのほうを向く。 「……此処よりももっと綺麗な景色、たくさんアルネ。 世界は広いヨ。お前が知らないような風景、たくさんたくさん在るネ」 ひゅう。三人の間を、涼やかな夕風が吹きぬける。 神楽ちゃんは言葉を続けた。 「私が、私が、連れてってやるネ。 お前の知らない景色、綺麗なトコロ、ずっとずっと見せ続けてやるヨ。 ずっと、ずっと。一生。だから、」 だから、という言葉が、どこか湿っていた。 あ、と思って神楽ちゃんを見ると、神楽ちゃんの頬を大粒の涙が伝っていて。 沖田さんは、さきほどの綺麗なものを見るような表情で眩しそうに目を細めて、そんな神楽ちゃんの泣き顔を見ている。 「………だから、だから、死なないでヨ。 お前、まだ、ちゃんと最後まで生きてないネ。まだ若いヨ。 まだ死んじゃだめ、だめ。私が、私が、ずっと一緒にいてやるから、 だから死なないでヨ」 涙声で言ってから、最後にぎゅっと唇をかみ締めて、神楽ちゃんは嗚咽を漏らしながらその場に崩れ落ちた。 沖田さんもそれに応じて、神楽ちゃんの傍に寄ってしゃがむ。 すると、神楽ちゃんは飛びつくように沖田さんを抱きしめた。
………いつの間にか橙から藍色へと変わり始めている空を見上げながら、 神楽ちゃんの小さな手を握り締めて、彼女の肩を抱いて、沖田さんは言った。 三人にしか聴こえないくらいの、小さな声で。
「…………すまねェ。」
それから、ずうっと、大声で泣き続ける神楽ちゃんを黙って抱きしめていた。 僕は二人を、ただ、その場に突っ立ってみているしかなかった。
(>>79のつづき)
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Re: 短筆部文集 1冊目 (へたれ部長と神部員がお送りします。) ( No.84 ) |
- 日時: 2007/06/25 16:46:04
- 名前: 深月鈴花
- 参照: http://ameblo.jp/rinka0703/
- お題サイト 宿花
愛憎相半ばする10のお題
「愛することと憎むこと」
目の前にいる彼を、私はできるだけ無感情に、何も映していないような瞳で見つめた。
「お前、いつもそんな顔してるよなー・・・」 彼は、溜息をつきながら言う。 「しょうがないじゃない。これが素なんだもの。」 「ちょっとはあのときみたいな演技もしてみせろよ?『いえっ、そんなことは・・・』とかって。」 「うるっさいわね、消されたいの?」
私は、西洋の傘を彼の目の前で構える。 ヒュッという風の音が、彼の耳元でとまった。
「おっかね〜」 「させたのは誰なんだか・・・」 傘をおろし、金髪の髪をかきあげると、あいつらと戦ったときの頬の傷がよく見えた。 「お前さぁ・・・殺せんの?」 「私はノアよ?エクソシストを殺すのに躊躇なんてあるわけないじゃない。」
「俺は別にエクソシストなんて言ってないけど?」
こいつは、いつもそう。 まるで詐欺師のようで・・・ 「あーっ、もう!!あんたといると調子狂うのよ!消えて!」
ヒステリックに叫ぶ。 彼・・・ティキ・ミックは私が憎くて愛しくてたまらない相手。 あいつは私の心をかき乱す。 ノアが恋愛感情なんて、おかしくて笑ってしまう。 それでも、涙が頬をつたうのは、愛しさゆえなのか、憎しみゆえなのか・・・
これはおそらく両方なのだろう。 柄にもなく、そう思った。
―――リィラ・ロウィラド・ジェムナスティ
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(スカーレットの空にきえた、 ) ( No.85 ) |
- 日時: 2007/06/25 18:42:07
- 名前: Gard
- 参照: http://watari.kitunebi.com/
- 空が燃えているようだった。
夕日で真紅に染まった空は、恐ろしい物があった。 紅すぎて、誰かの血の色に思えて、身体が恐怖で強張ってしまった。 それでなくても、心には暗雲が広がっていて、泣いているというのに。 学校の屋上で蹲り、燃えさかる紅い空から目を逸らす。 がちゃり、と屋上の扉が開く音がした。
「ああ、ここにいたんだ」
少女の涼やかな声が聞こえてきた。 屋上の床の上を上履きが歩く独特の音が聞こえる。
「……リョーコちゃん」 「どうしたのさ、神流。あたしに話してみ?」
彼女は俯いていた神流の横に腰掛け、顔を覗き込んでくる。 小学校低学年の頃この街に引っ越してきてから、ずっと友達だったリョーコは、側にいるだけで安心できた。
「あの、ね。遂に噂の出所、知ったよ」 「誰!? 神流の根も葉もない馬鹿な話を言ってたサイテーな奴は!」
瞬間的に激高する。他人のために怒れるというのが、一番彼女らしく、一番優しいと思うところだった。 少しだけ、口元が緩む。
「あのね、最近私と仲良くしてくれてた、女の子」 「あいつかぁっ!」
叫んで立ち上がり、今にも駆けだしていきそうなリョーコを服の裾を掴むことで止め、首をゆるゆると振る。 もう諦めていた。 仕方ないのだと。自分が人を見極められないからだと。
「神流……」 「いいよ、リョーコちゃんが怒らなくても。きっとすぐ、飽きるよ」 「……神流」
きつく、痛いぐらいきつく抱きしめてくるリョーコに、神流は目をはしはしと瞬かせた。
「溜めすぎだよ、神流は。自分の中に。涙、そんなになってるのに流れてないよ……」 「え、私、泣いてないの?」
自分では泣いてるつもりだった神流が更に瞬きをする。それでも涙は零れない。
「我慢しないでよ」 「…………心配掛けて、ゴメンね」 「ばか」
目尻に溜まりに溜まった涙を指で拭い、笑みを浮かべる。 弱々しくも、けれど普段と同じ笑みを浮かべた神流にリョーコも笑みを浮かべ。 暫くの間、笑い声を響かせていた。
――――――――――――――――――――――――― お題提供:栞様
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Re: 短筆部文集 1冊目 (へたれ部長と神部員がお送りします。) ( No.86 ) |
- 日時: 2007/06/25 19:24:14
- 名前: 栞
- 参照: http://www.geocities.jp/akatukiquartet
- 「こう見えても地球が好きでね。・・・・俺ァのんびり地球で釣り糸たらすさ」
宙へゆく、と告げた坂本に、そのひとはゆっくりと告げた。 銀色の髪を持つ、鬼神「白夜叉」。 戦場からは想像できないほどの、穏やかな顔だった。 その背中を見ながら、いつから私はこの背中を目指していたんだろう、と思った。
私の両親が殺されたのは、4年前のこと。 攘夷戦争に参加していた両親は、その戦いの最中で天人に殺された。 それから私は、唯一つの目的だけを胸に生きてきた。 両親の為に、出来る限り多くの天人を斬り殺してやろうと。
やがて、攘夷戦争で鬼神の如き戦いをする、「白夜叉」の噂を聞く。 戦場で見たその姿は、神と見紛うかのような、銀色の侍だった。 戦乱の最中に言葉を交わせた事は、奇跡に近かった。 女であることであまり周りと馴染めていなかった自分とも気安く話してくれた。 何の為に戦う、と問われて、私は親の仇と、一人でも多く天人を斬り殺す為と答えた。 私の答えを聞いた白夜叉は、何故か悲しげに、笑っていた。
それから月日は経った。 坂本の言葉に答えた白夜叉の言葉を聞いて、私は怖くなった。 私はこの人が戦いを止めてしまったら、どうやって生きてゆこうと。 天人を殺すことだけが生きている価値だった。この人と共に戦う事こそが、私の存在している理由だった。 怖くて、怖くて、その考えを振り払うかのようにひたすら刀を振るい続けた。 そして、その時は来た。
体を貫く、切っ先。
溢れ出した血。
全身に奔る痛み。
どさりとその場に倒れて、だんだん小さくなっていく空を見つめた。 伸ばした手はあかく濡れていて、その手を握ってひたすら私の名を呼ぶ人の正体も解らなかった。 ただ、嬉しかった。 私は存在理由があるまま、死ねるということが。 そして願った。 彼が好きだったこの星で、私というちっぽけな命が護ったこの星で、彼が生きてゆけることを。
夜叉が舞う戦場の中で、少女は微笑んで、静かに瞳を閉じた。
(自作10題:「夢の終わりを告げる猩猩緋」より)
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Re: 短筆部文集 1冊目 (へたれ部長と神部員がお送りします。) ( No.87 ) |
- 日時: 2007/06/25 23:34:33
- 名前: 春歌
- にこりと笑った君が愛おしいから・・・・・・・だから
「っ・・ぐ、、るしっ」 ぎりぎりと両手に力をこめる 「くる・・・・しぃ・・っり、、くせん・・ぱっ」 「苦しいか?・・・・苦しいのかぁ」 さらに、力をこめて彼女の首を絞める 「っ・・し・・ねよっ」 「死ぬのは君だよ、」 耳元でささやく声は甘く、その顔は穏やかで人を殺そうとしてる人には見えない あと少し、、、、あとほんの少し力を入れたら彼女は死ぬんだなぁ そんなことを思いながらそのほんの少しの力を入れた 「っ!!・・し・・んで、、よ。。。り・・くせ、、ぱっ、、、、っあ・・い・・し、、て・・・・・・・・・・・・・」
そのまま動かなくなった・・・ 死ねよといい先輩といい愛してるといい 「どこまで、馬鹿なんだ?」 どうして彼女を殺したか分からないけど 幸せと彼女が言ったから 今殺せば最後に残るのは幸せなんだろうなとか思いながら 不意に首に手を伸ばして、力を加えた・・・・・
「ただ・・・それだけ」 横たわる君にキスを送り 「あいしてるよ」
(僕が最後に君を見たのは幸せな時間の中で)
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Re: 短筆部文集 1冊目 (へたれ部長と神部員がお送りします。) ( No.88 ) |
- 日時: 2007/06/26 18:19:37
- 名前: 色田ゆうこ
- この空気には慣れていた。
心臓とか肺を、何かが内側からくすぐってるみたいな、訳の分からない緊張感。 例えばいつも通る並木道の匂いとかが微妙に違う。自然は未来を予測するのが得意らしかった。 半透明のゴミ袋を肩にかつぎ、家から出た瞬間、すう、と吸った空気が、微妙な記憶を呼び起こす。 「……あー」 (雨のにおい) ぷんぷんしてる。 今朝、テレビで見たお天気お姉さんの言葉を思い出した。夕方から夜にかけて雨が降るでしょう。 「帰ってくるまで降らなきゃいいなあ」 ごうごうと風が吹いていて木々がしなり、にび色の厚い雲が頭上で雨を準備している。
ギリギリのところまで耐えていた雲が、とうとうぽつぽつと雨を降らせはじめたとき、 俺はゴミ袋をやっと下ろして、肩をぐるぐると回していたところだった。 雨だと思ったのは顔に雫が当たる前で、いつもと違う感覚にびりびりと肌が反応していた。 (やな予感が、する) ぐるりと辺りを見回してみると、いきなりぞわっと鳥肌がたった。 こっちか。近寄ればぞくぞくと身体の中を何かが走り回って、雨に濡れることもお構いなしになってしまう。 視界を遮るゴミ袋の山を、腕を突き出してごそ、と退けてみた。
(やっぱり)
見つけた。と俺は思った。ゴミ袋の中に、「それ」は埋まっている。 長い前髪がただでさえ横向きの顔を隠していてよく見えないが、 白い首筋が妙に病的で痛々しくて、俺はそれにのしかかっているゴミ袋をぼとぼとと散らばせた。 どうしようかと見つめていると、それは意識を失ったままずるり、とゴミ袋の山から滑り落ちた。 手を出して支えようとしたがタイミングが合わず、彼の身体は大きな音を立てて地面へぶつかる。 「げ……」 しかし、痛みに顔をしかめることも、うめくこともなく。 そしてその少年は、落ちたときのうずくまったままの体勢で、ばちり、と、目を開いた。 (おい、怪我は、) 言おうとしゃがみこんで、黒すぎる目の色に、一瞬呼吸が止まる。 ゆるり。 見とれている合間に、それの左腕が重そうに持ち上がる。そして、俺の足をつかんだ。 「ひっ」伝わってきた手のひらのあまりの冷たさに、息を呑んでしまう。 こいつが人でないことは、さっきから肌を覆う痺れた感覚で、ずっとわかっているのに。 はあ、と苦しそうに息を吐き出した唇が、かすれた声をつむいだ。
「――――腹、減った……」
(ああ、やっぱり……) またか。と俺は思った。横になった彼の身体になまぬるい雨が降っている。 まるで生きてないみたいにつめたくて白い腕を引っ張って、俺はその身体を肩に担いだ。 雨が激しくなっている。周りがどんよりと暗い。 (風邪、引くかも) 俺もこいつも。がくり、と肩に少年の頭が乗っかる。 首筋に彼の真っ黒な髪の毛がまとわりついて、うざったくて仕方なかった。
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Re: 短筆部文集 1冊目 (へたれ部長と神部員がお送りします。) ( No.89 ) |
- 日時: 2007/06/26 18:59:43
- 名前: 涼
- 最初はただ、外から眺めてるだけだったし
向こうもただ、中から眺めているだけに過ぎなかった
向こうの世界はあまりにも現代に合わなさすぎて そこだけ時間が止まってしまった様に見えた
家の中からこちらを見ると、どう感じるんだろう? クーラーもつけている様子はなくて、暑くは無いんだろうか? いろいろな疑問が頭に浮かぶ でもそれを知る手がかりはなくて 彼と話す機会もなくて・・・・
同級生なはずの彼は誰よりも大人びて見えた 学校の中でも「彼」独自というべきか、「彼の家」独自の雰囲気をまとっていた そんな彼に友達なんているはずも無く いつも彼は休憩時間に本を読んでるだけだった
なぜだろう? 彼の行動をいつも追っている私がいる この行動の理由は何だろうか? それが分かれば苦労しない ただ、これが一般に言われる恋なんかでも好奇心なんかでもないのは分かっている
あの中に入れば、私のこのもやもやは消えるのだろうか?
そして、今日
彼の家を訪ねた
(続く、の形にとらせてくださいっ!!)
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タクシーで小旅行、ってかなりお金がかかりそうだ(何 ( No.90 ) |
- 日時: 2007/06/27 21:10:37
- 名前: そら
- 参照: http://yaplog.jp/sora_nyanko/
- タクシーの窓に手をかけて、過ぎていく電柱をただボーッと眺めた。
5本まで数えた。 でも、1度まばたきをしたらわからなくなった。 信号が赤になって、タクシーが止まる。 タクシーの運転手が機嫌よさそうにいろいろと話しかけてきたが、そのすべてに「まあ」と答えた。 信号が青に変わる。 タクシーは走りだして、運転手はもう話しかけてこなくなった。
チャキチャキと音が鳴る。 ポケットに入った鍵が何かと頻繁にぶつかる音だ。 運転手が不審そうな目でこっちを見ているのに気がつき、自然を装ってポケットに手をつっこんだ。 音が鳴らなくなる。 何事もなかったかのようにタクシーは右折した。 バックミラーに映らない片隅で、ポケットから手をだした。 しっかりと握ったポケットナイフがギラリと光った。
だんだん信号が少なくなって、やがてポツポツと街灯の灯りが見えるだけになった。 気がつけばもう日が暮れている。 タクシーはどんどん人気のない田舎道へ向かっていた。 もう1度、確かめるように少しだけナイフをポケットからだした。
「お客さん、そろそろ着きますよ」
運転手の声にギョッとした。 タクシーはゆっくりと停車して、何もない平地に止まった。 運転手がニヤリと笑った。 ひとつため息を残し、手に持っていたナイフをポケットにしまいこむ。 「どうしてわかった?ただの運転手さん」 「はは、僕のほうが一枚上手かな。きみは「いつも」顔にでる」 ふたたびタクシーが動きだす。 運転手はもう何も言わない、ポケットの中のチャキチャキという音だけが聞こえた。
街灯が点滅して、やがておちつく。 ポツポツと見える街灯を5まで数えて、また忘れた。
さて、次はどうやってあいつを殺そう。
(0勝8敗……か)
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Re: 短筆部文集 1冊目 (へたれ部長と神部員がお送りします。) ( No.91 ) |
- 日時: 2007/06/27 21:30:05
- 名前: 春歌
- 彼女の唇から漏れる吐息は苦しげで愛おしかった
「綺麗ね〜〜〜」 「あぁ」 「今日も良い天気ね〜」 「あぁ」 「・・・・・ねぇ緑?」 「なんだ?」 本から視線をはずし彼女を見た、そこには フェンスの向こうにいる彼女だった 「何をやってる?」 「いやぁ?」 「ならこっちに来い」 「ねぇ・・・飛び降りたらどうなるんだろう?」 「死ぬ・・・んじゃないか?」 そういうとふふっと笑いそうねと彼女は答えた
ふわりと風が彼女の髪をさらう
瞳はとても悲しげで涙があふれていた
なのにその形の良い唇はきゅっと三日月の形に吊り上げられて
その吐息は苦しげに何度も呼吸を繰り返す
そのあと
ばいばいと言い、地上へと消えていった 落ちる瞬間「愛してくれてありがとう」 そうつぶやいたのがわかった
どん!!
下のほうで鈍い音と、人の悲鳴が聞こえた
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