Re: 忠タロウ的・孝&誠代理用投稿掲示板〜その一〜 ( No.1 ) |
- 日時: 2008/07/29 22:59:31
- 名前: 孝
- 二人が森を疾走していくと、術者である千草を発見した。
千草を睨み付けながら鏡夜は… 鏡「…覚悟の上?」
問い掛けとその表情の険しさに、手を引かなければただでは済まさないと警告されていたことを思い出す。 もはや一考するまでも無かった。 草「ここまで来てもーたら、行くとこまで行くしかあらへんやろ?」 そう冷笑を浮かべてみる。
鏡「そう。なら僕が地獄に送ってあげるよ。貴女は犯してはならない罪を二つ犯した。地獄行きは決定だよ」 草「犯してはならない罪どすか?はて?心当たりがありすぎてどれだかわかりまへんなぁ」
ケラケラと笑う千草。 その彼女をギンッ!!と音がしそうな視線で睨み付ける。 あまりの眼力に千草の笑いが止まった。 鏡「一つ。"僕の大切な人を巻き込んだ"こと」 こ「んん〜!!」
両手両足を封じられ、猿轡までかまされた木乃香がジ〜ンと感動していた。 時と場合を考えろと言いたくなるが、愛しい男に"大切な人"と言われたのだ。 これで感動しなければ嘘である。
鏡「そしてもう一つ。“僕の大切な睡眠時間を削った"こと」 草「………は?」
|
Re: 忠タロウ的・孝&誠代理用投稿掲示板〜その一〜 ( No.2 ) |
- 日時: 2008/07/29 23:03:14
- 名前: 孝
- 鏡「警備と警護、更に教師の仕事。このせいでここ最近は毎日三時間弱の睡眠。このうえ更に睡眠時間を削るような真似をしてくれて。さっきも聞いたけど覚悟の上なんだよね?」
草「ち、ちょっと待っておくれやす!さっき聞いた"覚悟の上"てそういう意味かえ!?」 鏡「それ以外にどんな意味が?…っていうか、もうそんな話なんてどうでもいいんだよ。僕はさっさと木乃香を取り戻して"寝れればそれで良い"んだから」
千草の心に虚しさが到来する。真面目にやっていた自分が馬鹿みたいではないか。 だが彼女は判っていなかった。 彼にとっての"睡眠"の持つ価値を。 その睡眠を奪われた彼の怒りを。
刹「…鏡夜さん!?氷牙さん!」 青年側の森の暗闇から、三つの影が川に飛び込んで来た。 先頭で野太刀を下段に構える少女、桜咲刹那。
左後方で大剣を手に八双の構えをする少女、神楽坂明日菜。 そして右後方で杖を胸の前で掲げる少年、ネギ・スプリングフィールド。 これで、役者は揃ったという訳だ。自分の復讐劇の終幕を彩る、役者達が。
刹「天ヶ崎千草!!明日の朝にはお前を捕らえに応援が来るぞ!!無駄な抵抗はやめ、投降するがいい!」
|
Re: 忠タロウ的・孝&誠代理用投稿掲示板〜その一〜 ( No.3 ) |
- 日時: 2008/07/29 23:04:49
- 名前: 孝
- 刹那が勇ましく刀尖を突き付けてくる。それに対し、千草はふんと鼻で笑っただけだった。
全て予想通りである。関東魔術協会が、そう何時までも自分の勝手を許しておくものか。 無論、対抗手段も考えてある。
草「…あんたらにも、お嬢様の力の一端を見せたるわ」 そう言うと、千草は岩から降りた。木乃香を抱き抱えている猿鬼もそれに続く。 気で反発させている為、足が沈むことは無い。 草「お嬢様、失礼を」 軽く頭を下げて、少女の胸元に札を投げつけた。 こ「んっ……」
ひらりと舞い降りた紙片は、木乃香と接触するや発光を始めた。 彼女の魔力を吸収し、指示された術式を発動させているのだ。 草「[オン]」
呪を紡ぐ。これで完全に、後には戻れなくなった。川の水面が、白光を放ち始める。 仮に地獄があるのなら、それは目前に広がるこの光景のことを指すのだろう。 青白く輝く水面と、そこから迫り出してくる異形の群れに、刹那はそう思った。
百などとうの昔に超えていた。
独眼の大鬼が、鈍色の甲冑に身を包んだ小鬼が、長刀を身に帯びた烏天狗が、それでも足りぬとその数を増大させ続けている。げに恐ろしきは木乃香の魔力か。
|
Re: 忠タロウ的・孝&誠代理用投稿掲示板〜その一〜 ( No.4 ) |
- 日時: 2008/07/29 23:06:58
- 名前: 孝
- それを源に召喚術を行使した千草は、夜の森を人知及ばぬ異界へと変貌させてしまっていた。
心弱き者ならば、蔓延する妖気に正気を失っているだろう。
無論鏡夜と氷牙はその例には当てはまらず、寧ろ闘争心を募らせるばかりであったが。 草「あんたらには、その鬼共と遊んでてもらおか」 揶揄するように笑うと、千草は重力の縛鎖を断ち切るが如く夜空へと舞い上がった。 木乃香を抱えた猿鬼も、悪魔を従えた白髪の少年もそれに続く。
刹「まっ…待て!!」 後を追おうとする刹那の前に、異形の軍団が立ち塞がる。 呼び出された彼らは、忠実にも主の命に従っていた。
[悪いな嬢ちゃん達、呼ばれたからには手加減できんのや…恨まんといてな] 鬼の一体の地響きにも似た声に、獣の唸り声のような笑声が重なる。 それが嘲笑であることは、この場の誰の耳にも明らかだった。 ここに第三者がいたのなら、この光景を猫に囲まれた鼠の図と評することだろう。
ただし、ただ嬲られ殺されるだけの鼠では、決して無く。
鏡「…どうあっても、木乃香を返すつもりは無い…ってことだね…?」 まるで地獄からの怨嗟のような声。その怒りの滲んだ声が鏡夜の不機嫌さを物語っている。
|
Re: 忠タロウ的・孝&誠代理用投稿掲示板〜その一〜 ( No.5 ) |
- 日時: 2008/07/29 23:09:24
- 名前: 孝
- 刹「(鏡夜さん…そこまでお嬢様のことを…)」
木乃香のことを想ってくれる鏡夜に嬉しくなると同時に、ちくりと胸の痛みも感じる。 その想いは自分だけに向けて欲しい。
木乃香を想う以上に自分の事を愛して欲しい。 そう思ってしまう自分に自己嫌悪を感じる。 氷「心配すんな」 刹「…え?」 氷「あいつが不機嫌なのは木乃香のこともあるが、"それ以上に寝不足で荒れているだけ"だ」 刹「ね、寝不足…」 自分が感じた胸の痛みはなんだったのか…。 少し哀しくなる。
氷「とにかく、今は木乃香を奪還する事が先決だ。いい加減寝かせないとあいつがキレる」 宣告と同時に、氷牙の掌から閃光が放たれた。 鉄板をくり貫いて作ったかのようなぶ厚い巨槍を左腕一本で支え、切っ先を鬼の軍勢へと向ける。
氷「…さぁて…狩りの時間だ…」 [……!!] 急速に膨れ上がる殺気。
もはやこれ以上双方に言葉は要らず、異形達は各々得物を握り直した。 氷牙が槍を構え、一歩前へ踏み出し、いよいよ戦端を開こうとした。 …瞬間、地から舞い上がった陣風がそれを阻んだ。
ネ「風花旋風・風障壁!!」 ネギの生み出した竜巻は、正しく障壁となって風の無い中心部に立つ四人を守る。
|
Re: 忠タロウ的・孝&誠代理用投稿掲示板〜その一〜 ( No.6 ) |
- 日時: 2008/07/29 23:10:36
- 名前: 孝
- 更に巻き上がる川の水と風音で、中で何をしようと鬼達に気取られることは無い。
氷「…これは(十年前の)…」 どこか苛立たしげに、氷牙は風の壁を見遣った。
眉間に皺を寄せた姿は、御馳走を前にお預けをくらった犬にも似ている。 ただしそれは猛犬、手にした刃は今にも風障壁を断ち切らんとしている。 ネ「落ち着いてください、お二人共!何か作戦を立てないと!」 真正面に立って、彼を制止したのはネギだった。 少年の抗議に、青年達は恥じるように喉の奥で唸る。
鏡「作戦?関係ないよ。向かってくる奴から殺す。それだけだ。邪魔をするって言うなら君も殺すよ?」 一瞬でネギの喉元に刃を突き付ける。 ネ「う…あ…」 向けられる殺気に言葉を失うネギ。 慌てるのは周りだ。 明日菜がネギを庇おうと、刹那が鏡夜を止めようとそれぞれ動く。 だがその行動は鏡夜の一睨みによって封じられた。 氷「…とにかく木乃香を助けられればそれで良いんだ。俺と鏡夜でこの鬼を引き受ける。お前らは木乃香の救出に向かえ。以上だ」
その、ネギにとっては非情とも言える内容に、その場の全員が言葉を失った。
|