Re: 忠タロウ的・孝&誠代理用投稿掲示板〜その一〜 ( No.7 ) |
- 日時: 2008/07/29 23:12:37
- 名前: 孝
- 奪還しろと彼は簡単に言うが、それを黙って見過ごす程千草達も愚鈍ではあるまい。
成功したとしても、二人が一身に受けることになる追撃の熾烈さは容易に想像することができた。当然の如く、刹那が反論する。
刹「そんな、無茶な…っ」 氷「無茶?どこが?俺らがこいつら相手に遅れをとるとでも?」 鏡「ぶっちゃけ眠くて思考能力が低下してるんだよ。混戦になったら僕、敵味方関係なしに切り裂くよ?」 物凄い良い笑顔でのたまう鏡夜。 ネ「…僕、やります」 ア「私も…やるわ」 その風音にも負けぬ力強い言葉は、他の誰でもないネギとアスナの発したものだった。 ネギの両手は、杖を握り締めて。眼鏡の奥の瞳には、強き意思を光らせて。
ネギ・スプリングフィールドと神楽坂明日菜は決断した。 ネ「正直…少し怖いです。でも、僕は僕にできることをしなきゃ、一生父さんに追いつけません」 ア「仮にも私は鏡夜達の"義娘"よ?そう簡単にやられるもんですか」
誰も、何も言えなかった。 彼等の示した勇気に、これ以上どんな言葉を付け足せば良いのだ? 鏡夜達は頷くと、二人に背を向けた。左腕を前方に突き出す。
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Re: 忠タロウ的・孝&誠代理用投稿掲示板〜その一〜 ( No.8 ) |
- 日時: 2008/10/19 03:27:22
- 名前: 孝
- その時…
刹「私は残ります!」 鏡「…僕の話、聞いてなかったの?」 鏡夜が目を細める…が、 刹「聞いてました」 鏡「なら…「大丈夫です」?」 刹「私は…鏡夜さんを置いて死にはしません…死んでたまるものですか!」 鏡「刹那…」 二人の表情は真剣で…若干頬が赤かったのは気のせいではないだろう。
氷「(熱い熱い)…なら、道は俺が…」 鏡「ごめん。それ、僕にやらせてくれない?」 氷牙の言葉を遮り、鏡夜が刹那から離れ、一歩前に踏み出す。 氷「あぁ?んなのどっちが…」
氷牙の言葉が途切れる。鏡夜の凍て付く笑顔を見てしまったせいだ。 鏡「誰を敵に回したか教えてあげなきゃ。僕の睡眠時間を削るということがどういうことか理解させてあげなきゃ…ね?」 氷「お…おっしゃる通りです」
怒気、殺気、狂気。 それに合わせて魔力が爆発的に増大していく。 その増大した魔力は右手に収束され魔力球となる。 鏡「狂える雷、道となれ」
狙いは、今まさに消え去ろうとしている風の障壁。 ネギは杖に跨り、アスナは変化したムックルに跨る。 刹那は夕凪を構える。 鏡夜は右手を突き出し、左手を右手首に添える。 風の障壁が消滅し、居並ぶ鬼の軍勢が視界に入る。
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Re: 忠タロウ的・孝&誠代理用投稿掲示板〜その一〜 ( No.9 ) |
- 日時: 2008/10/19 03:40:30
- 名前: 孝
- 氷「さっさと片付けて追いついてやっから!心配するな」
鏡「エイル・ジェスタ!!」 雷が白い閃光となり、魔物を飲み込む。
…ォォォオオオッ!!
大地を抉る光の奔流。 触れる物すべてをプラズマ化させ、蒸発させる。 それは防御すら無意味な、正しく[暴力]。 鏡夜の傍らを、二陣の風がすり抜けて行った。 振り返る事はせずに、ネギ達は夜が舞い戻りつつある空を一直線に駆け抜ける。
それを見送ると、鏡夜達は前方に視線を戻した。 そこには削り取られた大地と、生き残った大勢の異形達。
ネギ達は勇気を示した。ならば、自分達は刃を持ってそれに報いよう。 氷牙は、地面に突き刺した巨槍を左手で握る。
氷「いっくぜぇ!」 氷牙の叫びがゴングとなる。
その湖は、現在鏡夜達と鬼の軍団が激戦を繰り広げている森の外れに広がっていた。 その中央には、橋で岸と繋げられた浮き島。 暗い水面から顔を出す石造りの土台に、その上に灯篭に囲まれた木造の祭壇が重ねられている。 数年程前に関西呪術協会が築造した物だ。
千草は、そこに木乃香の身体を横たえた。 最前まで纏わせていた着物は剥がされており、少女の裸体を覆っているのは頼り無い薄布一枚のみだった。
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Re: 忠タロウ的・孝&誠代理用投稿掲示板〜その一〜 ( No.10 ) |
- 日時: 2008/10/19 03:43:00
- 名前: 孝
- その傍らで、千草は黙然と正面を見据えている。
彼女の視線の先には、灰色をした、異形の卵が在った。
それは、歪んだ楕円形の巨石。その表面を縛り付ける無数の注連縄に施された結界は、並の妖魔なら触れただけで消滅してしまうだろう。 つまり、封じられているのはそれ程までに強大な存在。 先の大戦の英雄であるナギ・スプリングフィールドと、その仲間だった近衛詠春が封印したという大妖である。
それを、千草は復讐の立役者に仕立てようと目論んでいるのだ。 何たる無謀、何たる愚考と人は嘲弄するだろう。 事実、千草の力では封印を解く事はできても制御する事は不可能。 操るどころか、蝿のように叩き潰されてしまう。 だが、木乃香が…かのサウザンドマスターをも超える魔力の保持者が手中に在るのならば、戯言は現実となる。
千草は木乃香に顔を近付けると、優しく囁いてやった。 草「ご無礼をお許しください、お嬢様。何も危険はないし、痛いこともありまへんから」 その台詞に嘘は無い。魔力の解放は、寧ろ快感すらもたらす筈だ。 例えば、狭く暗い卵の殻を突き破り、外界の空気に触れた小鳥のように。 例えば、蛹からかえり、優雅に空を舞う権利を得た蝶のように。
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Re: 忠タロウ的・孝&誠代理用投稿掲示板〜その一〜 ( No.11 ) |
- 日時: 2008/10/19 03:54:00
- 名前: 孝
- 実際、鬼達を召喚した際に木乃香が漏らした呻き声は苦悶による物では無い。
あれは、快楽から来る嬌声だ。
草「…ほな、始めますえ」 千草は右手で剣指を作ると、その先を口元に当てた。 草「"イジャヤ"」 呪を唱える。木乃香の身体が、電流を流されたかのようにびくりと跳ねた。
こ「んんっ……」 再びくぐもった声を漏らした少女の全身を、淡い白光が包み込む。 魔力によって生み出されたそれは見る間に輝きを増し、遂には…巨大な光の柱となって夜空を貫いた。
刹「くっ!」 軽く悲鳴を上げて、刹那は半ば転ぶように鬼の脇をすり抜けた。 ドオォンッ! 振り下ろされた鬼の拳が地を穿つと同時に、少女の野太刀が広い背を斬る。 [グガァァッ!?] 獣然とした咆哮を残して、鬼は針に刺された風船のように破裂してしまった。
刹「あああっ!!」 刹那は足を止めない。雄叫びを上げて、勇猛果敢に鬼の群へ突進して行った。 振り回された[夕凪]が月下に無数の円弧を描き、その範囲内の敵を洩れなく駆逐する。
[このガキィッ!!] 仲間の無念を晴らさんとばかりに、甲冑に身を包んだ子鬼が刹那に向けて禍々しい棘の生えた金棒を振り翳した。
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Re: 忠タロウ的・孝&誠代理用投稿掲示板〜その一〜 ( No.12 ) |
- 日時: 2008/10/19 04:00:32
- 名前: 孝
- しかし、風を唸らせて切迫する凶器は、少女を砕きはしなかった。
鏡「大丈夫?刹那…」 その金棒が砕かれたからだ。 刹那との間に割り込んできた、鏡夜によって。
鏡「流石の僕も…許容できないかな…」 氷「…?鏡夜?どうし…」 鏡「…グル?」 氷「き、鏡夜?…まさか」 獣のような唸り声を聞いた氷牙は冷や汗を流す。
獣化・暴走。
その言葉が氷牙の頭を過ぎった。 刹「あ、あの…鏡夜さん?」 鏡「グガァァァァァ!!!」 刹「ひっ!」
ビクリと震えて距離を取る刹那。 怖かった訳では無い。 ただ純粋に驚いただけだ。
刹「あの…どうしたんです?」 答えを知っていそうな氷牙に振る。 氷「理性がぶっ飛んだんだよ…眠気と、お前の危機でな」 刹「え…(///)」 言われて、頬を朱に染める刹那。
氷「(黒龍化しなかったのがせめてもの救い…か)まぁ、ほっといても大丈夫だ。ってか、今手を出すと"こっちが危ない"」 刹「はぁ…」 氷「今考えるのは木乃香の奪還だ。それ以外は取りあえず置いとけ」 刹「判りました」 二人は武器を振り上げる。 鏡夜は構えもしない。 そして、三人は再び鬼達に向かって跳躍した。
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Re: 忠タロウ的・孝&誠代理用投稿掲示板〜その一〜 ( No.13 ) |
- 日時: 2008/10/19 04:07:53
- 名前: 孝
- 鏡「ガアァァァッ!!!」
獣のような雄叫びをあげ、金棒を殴り砕く。 鏡「グルルルル…」 右手を顔の前に持っていき、その指の間から次の獲物を探すように視線を巡らせる。
普段の穏和な彼の表情からは想像できない程、彼の雰囲気は危うかった。 爪は鋭利な刃のように伸び、口元には吸血鬼のような牙が覗く。
刹「凄い…」 フッ! 鏡夜の姿が掻き消えた。 シュンッ! ブシャァァァァァッ!! 鬼達の鮮血が舞った。 鏡夜の姿が掻き消え、次の瞬間には敵集団の中心に出現し、その場で死を撒き散らす。
貫き、引き裂き、蹴り砕き、噛み殺す。 返り血で全身を紅く濡らせながら、獣のように暴れ狂う彼の姿に目を奪われる。 飛び散る返り血が花の花弁のように見え、残酷な惨劇を崇高な儀式のように見せる。
魅せられていた。
力強く、美しく、気高く、荒々しい。 いかなる儀式も、いかなる絵画も、目の前で繰り広げられる獣の舞の前には色褪せて見える。
氷「ハァッ!」 時間も忘れて魅入っていた刹那の意識を戻したのは、氷牙の掛け声だった。 声につられて視線を向けると彼もまた敵の中心で舞っていた。 鏡夜の舞が力で強引に敵を吹き飛ばす暴君のような物だとすれば…
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Re: 忠タロウ的・孝&誠代理用投稿掲示板〜その一〜 ( No.14 ) |
- 日時: 2008/10/19 04:11:35
- 名前: 孝
- 氷牙のそれは、いかに効率良く敵を葬るかを考えた。"計算された殺戮者"のソレだった。
手に持つ巨槍で敵の心臓部を貫き、引き抜く槍の柄尻で背後の鬼の顎を砕く。
更に横から迫った烏族を回転させた槍の柄で殴り飛ばし、その後ろから迫っていた猿鬼の頭蓋を回し蹴りで粉砕した。
戦闘になり得ない。
それは一方的な殺戮だった。
瞬く間に死を量産してゆくその様は、もはやどちらが鬼なのか分かったものでは無い。 地獄の悪鬼が亡者を喰らっているようにさえ見えた。
刹「…やはり、お二人は強い…」 固唾を呑んで、刹那の喉がこくりと動く。 これでも、"まだ本気ではない"のだから…
魔族とは、こうまで[戦い]を極められるものなのか? それとも…魔族故に[戦い]を極めてしまったのか?
刹那の心を満たした感情は、あるいは憧憬だったのかも知れない。 不意に、背後で絶叫が上がる。 慌てて振り返ると、大鬼が獰悪な牙を並べた顎を開いて直立していた。 その喉奥からは、長大な槍杖が生えていた。
鈴「よそ見している場合?」 槍杖が鬼の口の中に消え、支えを失った巨躯がどさりとその場に崩れ落ちた。 声は、その向こうに立っていた少女が発した物だった。
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Re: 忠タロウ的・孝&誠代理用投稿掲示板〜その一〜 ( No.15 ) |
- 日時: 2008/10/19 04:17:43
- 名前: 孝
- 氷「…神鈴。(来ちまったよ…)」
蒼い髪をサイドテールに纏め、薄緑を基調としたくノ一の様な服。 最近の神鈴の戦闘装束だ(以前(ハルケギニアでは)はローブ)。少女は小馬鹿にしたような表情で刹那を笑う。
鈴「目が覚めたら鏡夜兄様達が走ってくの見つけたから。追いかけてみたの♪」 [ぐぁああッ!!] 断末魔の叫びと共に、体全体を蜂の巣にされた異形が神鈴の足元に落下して来る。 人間の身体に、鴉の頭部を備えた烏天狗だ。 遅れて、漆黒の翼を背負った青年が、静かに地に降り立った。
両手には、飛針と呼ばれる長針。 音「ふん。その程度で俺に勝てると思うなよ」 消え行く異形に冷たく言い捨てる。
そして、神鈴はぐるりと首を旋回させた。 喜色に染まったその表情は完全に緩みきっていて、数秒前までの彼女とはまるで別人。 熱い視線の先では、鏡夜が右手に巨鬼の生首を掴みつつ、烏族の首元に牙を突き立てているところだった。
鏡「グルルル…」 そんな鏡夜を見て、神鈴はクスリと笑う。 鈴「クスッ。鏡夜兄様ったら眠くて理性が飛んじゃったのね?」 チラリと神鈴の方に視線を向けた鏡夜だが、すぐに興味を無くしたのか?次の獲物に向かって駆けていく。
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Re: 忠タロウ的・孝&誠代理用投稿掲示板〜その一〜 ( No.16 ) |
- 日時: 2008/10/19 04:26:09
- 名前: 孝
- 鈴「あぁ〜ん♪いつもの少年の様に緩みきった鏡夜兄様も素敵だけど、今のワイルドな兄様も大好きよッ!!」
瞬間、刹那の瞳が殺気に煌いたのは気の所為ではないだろう。
その証拠に、次に飛来した炎の真空刃(刹那の新技・炎空刃(えんくうは))の直撃を受けたのだから…。 轟く超高熱の白光が、容赦無く敵(刹那視点)を抱擁する。
鈴「あきゃああああッ!!…ふふ、私の、心は、常に鏡夜兄様にイチコロ、よ」 一体何処から湧いてきたのか、背後に大量の青薔薇を撒き散らしつつ、神鈴だった人型の消炭が大の字となってその場に倒れ伏す。
余りに黒過ぎて、表も裏も分かったものではない。
風が吹き、全身から立ち上る白煙と共に鼻を摘みたくなるような異臭が森中に運ばれてゆく。 氷「…ハァァ〜…全く、一体誰の影響なんだか…」 音「母上だろ…まぁ、その内復活するから無視していいだろ?それより、妖怪退治、妖怪退治♪」
今まで神鈴の抑制役として鬱憤が溜まっていたのだろう。 妖怪退治という恰好のストレス解消法を見つけた神音の瞳は、爛々と輝き、それでいてギラギラと燃え盛っていた。
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