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短筆部文集 // 4冊目 (ゆるゆると製作中!)
日時: 2008/04/03 21:19:08
名前: 沖見あさぎ
参照: http://tool-4.net/?mysugarcat

短筆部文集もついに4冊目。フォー!(だまれ)
みんなイベントとか忙しいと思うけど、短筆部も見捨てないでくださいね?

さてさて。
連載も突発もオッケーな自由度高い企画なんだけど、一応ルールは守ってもらわないと。
じゃあとりあえずここでのルール、いきます!(箇条書きで)

・参加できるのは短筆部部員のみ。書きたいよ! って子は、まず入部届け(笑)を出してください。
・台本書き(情景を書いていない文章)禁止。
・文章は文字数がオーバーしない範囲。
・リクを貰ったり募集したりするのも可。ばんばんしちゃってくださいな。
・ギャル文字などは厳禁。誰でも読める文を書いてくださいね。
・一次創作・二次創作どちらでも。ただ、(ないと思うけど)年齢制限のかかるようなものは書かないこと。
・リレー小説のキャラ、自分のオリキャラを出すのは一向に構いません。でも、他の方のキャラを借りるときはちゃんと許可を貰ってからにしてくださいねー!

間違ってもこちらには参加希望などを書かないでくださいますよう。
ではでは、どうぞー!
メンテ

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清き世を、望月の夜を ( No.1 )
日時: 2008/04/13 01:45:30
名前: 沖見あさぎ
参照: http://tool-4.net/?mysugarcat

逢魔が刻。
そいつは突然、オレの家の庭先に現れた。
オレの家の裏は山に面し、庭の垣根を越えた先は竹林となっていて、昔からオレは嫌なことがあるたび家を抜け出して竹林へと逃げ込んだものだ。そのつど父上に連れ戻されこっぴどく叱られたものだが。(オレは父上が好きで、叱られることがいやではなかった(オレのことを無いものとして扱われるよりはましだ)し、父上がオレのことを想って叱ってくれている(実際オレを叱るときの父上の瞳はこの上もないほど優しい)のはわかっているから、だからこそ構ってほしくて、しょっちゅうそういう「家出」をしたもんだった。)
その竹林から、オレと同じくらいの歳の少年がふらふらと歩いてきたのである。



初めてまみえたときから、こいつだ。と強く思った。

目と目が合った瞬間、雷が落ちたような、身体中をそれが駆け抜けるような激情を憶えたのだ。そいつの眼は、不思議なものを帯びていた。オレの右目は包帯で覆われ、包帯の下の眼窩にはなにもない。空洞だ。先日、もっとも信頼する側近に抉り取られた。その眼球が何処に行ったかは知らないが、とにかくオレは右目を失っている。それに比べ、もちろんそいつは両目が揃っていた。しかし言い得て妙だ。そいつの左目はオレと同じような漆黒ではない。鈍い、曇天の空のような、濁った灰色だった。それどころか、顔の左、髪の生え際から左目を通り顎に至るまでに大きな刀傷が走っていたのである。右目の濡れた鴉色は、うつろな光を灯してオレを見つめていた。けれど灰色の濁った左目は、この世の何も映してはいなかった。
その瞳を見て、間違いなくオレは心を動かされたのだ。
「お前は?」
からからと乾いた喉から搾り出すようにして訊ねる。痺れたような身体の感覚が抜けぬまま、俺はそいつを見つめ続けた。そいつは少し小首を傾げてじいとオレを見据えたまま、まるで言葉を滑り出すようにして、血色の悪い唇を開いた。

「―――望月、清世」

もちづききよせ。そう自分の名を告げて、またそいつは押し黙った。
此処にいることになんら違和感を感じていないかのように。そうか、とオレは頷いた。

「オレは、梵天丸だ。清世、オレの友になるといい」
「………………友」

ぼんやりと呟き、ぼんやりと空を見上げながら、うん、と一つ頷いた。
空は真っ赤に燃え、夕陽は山の奥へと沈み込もうとしている。

こいつが何者か。何のためにやってきたか。
そんなことはもうどうでもよかった。
初めて感じた激情に忠実に、オレはこいつを傍に置こうと決めたのだった。
メンテ
うみねこは・・・もう鳴いた? ( No.2 )
日時: 2008/04/18 20:02:24
名前: 神凪由華
参照: http://mbbs.tv/u/read.php?id=illustsuki&tid=63

どうして、こんな事に?

何で?

何で?

紗音姉さん・・・・。





「運がなかったのだ」

源氏は言った。
何で?
どうして?
教えてくれ、ベアトリーチェ様。何故紗音なんですか?
何で、あの汚れた絵羽じゃないんです?
何で・・・。

「奥さまの扉に、何者かがドアノブを引く抜こうとした跡があった」

紗音になくて、奥さまに・・・夏紀にあったものは…何だ?
ずっと、ずっと考えていた。

「きひひひひひひ。戦人は、お守りがあったから、助かったんだよ」

戦人は気付いていない、ベアトリーチェ様に・・・。
・・・?
お守り?
たしか・・・お嬢様は・・・奥さまに・・・・。
そうか。
あのお守りのおかげか・・・。
くそくそくそくそくそっ・・・・・。
なんでなんでなんでなんでなんでなんで!!!!!!
許せない許せない許せない許せない。
お守りなんかのおかげで・・・。
・・・。まず事件の発端はあいつだ・・・。あの男・・・。
汚らわしい、もう名前なんかで呼ぶものか。
そうだ、あの日、あの場所で指輪なんか渡さなければ。
そうだそうだ全部あの野郎のせいだ。
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねっ!!!!!!!!!!!
うァあああああああああああああああああああっ!
許さない
許さない
許さない
許さない
許さない
それに、まずこの下らない儀式。
それすらいらついてくる・・・・。







「ルーレットの赤でも黒でもない。ゼロだっ!」

「きゃははははははははは」

不思議な笑い声。鉈は地に落ち、眉間にナイフが。
ああ・・・姉さん・・・。やっとそっちにいけるよ。
もう家具じゃない。
向こうで、一緒に・・・・。






うみねこは・・・もう鳴いた?
          泣いた?





いいや・・・もう、なかない。
メンテ
能天気な神サマ ( No.3 )
日時: 2008/04/19 21:59:17
名前: 神凪由華
参照: http://mbbs.tv/u/read.php?id=illustsuki&tid=63

「・・・・。」
ありえないだろ、うん。
つーかありえてたまるものか・・・・。
目覚めると、目の前には、2つの門がった。
【地獄行き】 【天国行き】
いやいやまじで、まじで。俺、何?とうとうサンズノカワって奴を渡っちまったのかよ!?うっそー・・・まじで?それ激ヤバじゃん・・・。
・・・とか俺が錯乱しながら(いや、してるのか?意外と冷静な気がするぜ・・・?)門の前でうなっていると、黒いコートを着た男が出てきた。
「あー・・・今回の奴〜。え〜と・・・名前なんだっけ?まぁいっか。君。」
「・・・俺デスカ?」
「キミ以外ここにいないだろ?」
一見。その男は・・・なんつーか・・・そう・・・。
『死神』・・・・「じゃないから安心して。」
「なにげ俺の心の声読むなよっ!!」
「いや、だってなんか口にしてるよ?君。無意識?」
「えーと無意識で・・・じゃ、なくて!!!じゃあお前は一体何なんだよ!」
「神様。」
・・・即答ですか。
あ〜・・・え〜と・・・とりあえず・・・。
「頭大丈夫デスカー病院行ったらどうデスカー?」
「なんで『ですか』だけがカタカナなんだよ。活字じゃないとツッコめないだろ。」
おお。喋りのいんとねーしょんだけでツッコミしてきやがった。
なかなかやるな・・・・。
「つーかひどくない?正常だよ、俺。」
「だって・・・全然神様っぽくないし・・・黒いし?俺と同じくらいの年だし?」
そうだ。うん。
なんか話しやすいしサ。うん。ぜってー神様じゃねー・・・って言える・・・様な気がする。うん。あくまでも気がするだけだけど。
「そんなに信じないなら・・・う〜ん・・・あ。そだ。」
自称神様は、ぽんっと手を打つと、掌にペンで文字を書き始めた。
・・・マッ●ーペン・・・で。
「おいおいずいぶん所帯じみてるなァ・・・神様。」
「ま、いじゃん。●ッキーペンでも。」
「おおおいっ!!●の位置ちげーよ!!意味ねェよ!●の意味ゼロだよ!!」
もう商品名言っちゃったようなものだ。
・・・ってか言ってるよな?うん。
あれだ・・・なぜマッ●ーペンかっつーと作者がよくベタ塗面倒な時使ってるからだ。
おいおい。筆ペンあるならそれで塗れよってんだが金がもったいないらしい。広い面積は全部それで塗ってるなぁ・・・作者。
「ってか話脱線してるよ?君。」
自称神様は、そう言うと掌に描いた魔方陣のようなものを俺に見せた。
「おおっ!?]
するとそこが光り、自称神様の掌には魔方陣の代わりに、飴玉が・・・二つ。
「・・・なんつーか・・・わざわざ大がかりな魔方陣描かなくてもいーよな。」
神様自らぶっちゃけた。
「まあ・・・せいぜい1個30円くらいだしな・・・。」
「・・・それより、聞いていいか?自称神様。」
「うっわ、自称ってひど・・・。」
「まあまあ・・・で。俺、死んだの?」
「うん。」
わお・・・・。まじかよ?まじで??あー・・・・。いつ死んだんだろ。う〜む。思い出せないっ!!
「車にこう・・・・轢かれて。ご愁傷様〜。」
「・・・で、ここは死後の世界、だと。」
そうだ、本題はそこだよ。
「そう。」
「俺は・・・天国?地獄?」
できれば天国いきてえなあ、うん。まじで。つーか逝かせてください。
「さあ?どっちでもいいんじゃない?」
「・・・はあ?」









つづく
メンテ
【 孤独な燕のゆくところ 】 1 ( No.4 )
日時: 2008/04/19 22:33:22
名前:
参照: http://www.geocities.jp/akatukiquartet

崇高なる血脈に縛られる者と

己が身を巡る血脈に怯える者と

抗う術は、皆無に等しく

迷いの先に、進める歩の先は

思いの先の、彷徨い行く場所は

さあ、どっち?


【 孤独な燕のゆくところ 】


それは、とても昔。

何百年も昔の、話だ。

ある男女が、恋をした。
見目麗しい女と、長身痩躯の男。
2人は逢瀬を重ね、やがて結ばれる。
しかし、2人の間には、許されない壁があった。

男は、人間で。

――――――――――女は、魑魅魍魎のひとつ、「妖」だったのだ。

男は女の正体を受け入れた。…それでも。
両種族の間には、あまりにもかけ離れすぎた壁が、あった。
人間の血肉は彼らにとって、この上なく美味だ。
中毒性を持つそれは、力を欲す妖にはこの上ない「食料」だった。
霊気に満ちた身体となれば格別で、多くの人間が食われていった。
仲間を、家族を喪った人間は、妖を憎んだ。
霊気のある者が術を開発し、各々の力で妖を退治していった。
仲間を、家族を喪った妖は、人間を憎んだ。
ふたつの種族の溝は、最早埋め合わせなど出来ないほどだった。
それでも二人は結ばれた。例え、誰からも賛同されなかったとしても。
しかし、病弱だった男は、程なくしてこの世を去った。
残された女は、妖怪の頂点、「鬼」を目指した。
男の遺言を、約束を、守る為に。
やがて妖の首領、次代の「鬼」に認められ、女は妖の頂点まで上り詰めた。
そして、女は男との約束を果たすため、ある「掟」を作る。

「人間を食らってはいけない」

その、たったひとつの、掟を。

「………………今は駄目でも、いつか。…人間と妖が、共生できればいい。多少歪んでいたとしても…君や、僕らの子供が、平穏に暮らせるように」

それが、男の遺言、だった。
女の作った掟は、直ぐに破られるだろうと解っていた。
首領である「鬼」の命令は絶対だ。しかし、人間というあまりにも美味なものを一度食らった妖には、食べることを止めるなど出来はしないだろう。
女は男との子供に、妖の監視者、「鬼」の役目を託す。
そして、女は――――――――――

男との約束が守られるように、自らを捧げた。

「鬼」である女の血肉は、絶大な力を持つ。
女は、捧げたのだ。

――――――――――自らの、体躯を。

人間よりも強い力を持つものでないと、代用は出来ない―――――
考えた末の、女の出した結論だった。

――――――私の身で、代わりになるのなら。

そして、ようやく事態は沈静化した。
「鬼」の役目を託された子供、二人の双子は、それぞれ「妖の監視者」の名で、一族を創り上げた。

片方の名を、「紅燕寺」。

片方の名を、「蒼燕寺」といった。

紅と蒼の瞳を持った、燕の妖である母親を、称えて。
自らの身を捧げた女は、消息が解っていない。…遺体すら、見つからなかった。



――――――――――女の名は、「紫紅」といった。



*  *  *  *

(紅燕寺/こうえんじ)
(蒼燕寺/そうえんじ)
(紫紅/しこう)


メンテ
【 孤独な燕のゆくところ 】 2 ( No.5 )
日時: 2008/04/19 22:36:31
名前:
参照: http://www.geocities.jp/akatukiquartet

この世界には、目に見えぬ魑魅魍魎が跋扈している。
「妖」と呼ばれるそれは、太古から生き、人間と共存してきた。
末永く永久に生き長らえる為の、彼らの頭領である「鬼」の定めた、掟を守って。
けれど、彼らにとっての人間の血肉は、時に麻薬のような作用を起こす。
霊力に満ちた身体となれば格別で、妖の中には掟を破ってまで、人間の血肉を欲する者がいた。
その掟破りの妖達を始末するため、自分達はここにいる。


【 孤独な燕のゆくところ 】


「ねぇ、聞いてるの引きこもり眼鏡」
「煩い声が鼓膜に響く止めろ熱血馬鹿」
カタカタとキーボードを叩く音が部屋中に響く中、二人の男女が喧嘩口調で言葉を交わす。
「ねぇ聞いてるのってば、本当あんたってば頭どころか耳もおかしくなったの?」
馬鹿にしたような女の口調に、ノートパソコンを弄っていた男が顔をあげる。
「頭がおかしいのはお前だ。・・・話は聞いた、だが何故俺にその役目が回ってきていると言っているんだ」
至極面倒臭そうにする男に、女はさらに口調を苛々とさせた。
「だーかーら、あたしは忙しいのよ!あんた別にパソコン弄ってるだけで暇でしょう、ちょっとはこっちも手伝えって言ってるの」
「…だから」
そして男は、朝から口喧嘩となった理由を口にした。
「だからって俺が何故、あいつの面倒を見なくてはいけないんだ!」


「…ごめん」
部屋の扉の入り口に、新たな声。
その声の主は、喧嘩の元凶である「あいつ」、澪寺千暎という一人の少年だった。


「千暎」
名前を男に呼ばれ、千暎はびくりと身体を震わせる。
手招きをされてゆっくりと近づき、二人が囲んでいる卓袱台の近くに腰を下ろした。
「…ほら馬鹿、あんたが怒鳴るから千暎が怖がってるでしょ」
「怒鳴ってない」
まだ頑なな男に、千暎は一層身体を強張らせる。
「…ごめん、しー兄。無理言ってるのは解ってるんだ、でも」
「…だから、怒ってないって」
大きな掌を頭に乗せられ、千暎はゆっくりと男―――――紫桜を見上げた。
「俺は怒ってなくて、多少気に入らないだけだ。こいつがあまりに高圧的にお前の面倒を見ろと命ずるものだからな」
「って原因あたし?責任転嫁しないでよ根暗。あたしはあんたに千暎の面倒を見てって頼んだだけじゃない」
「千暎の面倒を見るのは別にいい、だがお前のその態度は何だ?…可哀想なのは頭以上に自覚の無いその人間性だな」
「え、ちょ、二人とも…!」
口論は白熱し、原因の千暎は完全に置いていかれ狼狽するばかり。
「はぁ!?可哀想なのはあんたの生き様でしょうが!っていうか紅燕寺家のご当主様に何て物言いしてくれてんのよ!」

そうなのだ。
目の前で紫桜と熱戦を繰り広げている少女―――紅燕寺菫鈴は、自分の従姉弟であり、紅燕寺家の現当主、なのだ。

紅燕寺と、蒼燕寺。
古くからこの一帯では有名な二つの一族は、成立時を遡ると遥か昔になる。
大方の古い資料は、戦時中に焼けてしまったらしい。
この一帯の世話役を勤め、江戸時代から大名とも深い繋がりを持ち、両家は存続してきた。
…………………というのが、建前上の両家。
実際は―――――世に存在する魑魅魍魎を統率し、時には罰するのが、両家の役目だ。
話は数百年、いや数千年前にも遡る。…実際のところ、不明だそうだ。
神々が地上にいた時代とも言われるし、平安初期とも言われている。
両家は、妖怪の君主「鬼」と、人間の君主の間に生まれた、混血の双子が作り上げた。
紅燕寺芭和と、蒼燕寺沙原。
「鬼」である母親に命ぜられた、妖の監視者の役目を負う一族として。
社を建て、その地で永劫繁栄するように。
燕の妖であった母の思いを何かしらの形で残すために、両家の名は考えられた。

濡れたような黒髪に、母の紅き右目を受け継いだ娘――――芭和は、「紅燕寺」。

濡れたような黒髪に、母の蒼き左目を受け継いだ息子――――沙原は、「蒼燕寺」。

芭和は掟破りの妖を罰するために剣技を編み出した。
沙原は掟破りの妖を滅するために術技を編み出した。

二人の始祖が編み出した技は両家に後世まで受け継がれ、今も妖退治に用いられている。

菫鈴は体の弱い父親に代わり、数年前晴れて紅燕寺家の当主となった。
蒼燕寺家では、術技の素養の差から、紫桜の妹である紫音が次代の当主として決定している。

そして自分、澪寺千暎がなぜここにいるのかというと――――――――――、

話は、更にややこしくなる。


*  *  *  *
>>4の続き)

(澪寺千暎/みおでら・ちあき)
(紅燕寺芭和/こうえんじ・はより)
(蒼燕寺沙原/そうえんじ・さはら)
メンテ
宵明姫(ヨイアケヒメ) ―1 ( No.6 )
日時: 2008/04/30 00:51:39
名前: Gard
参照: http://watari.kitunebi.com/

 風で揺れる柔らかな蜂蜜色の髪。ふわふわとした見た目に反し、さらさらと指の間を通り抜けるそれを撫でながら、黒髪の青年、小鳥遊恭哉は樹々の枝葉の隙間を縫って地面へと零れ落ちる陽光を見つめていた。
 蜜色の髪を持つのは、あどけない表情で彼の傍らに眠る少女。恭哉の式であり姉であり友人である「鶫」。
 恭哉と鶫、二人の出会いは恭哉がまだ幼い頃。彼の祖父がまだ小鳥遊家の当主を務めていた頃だった。










 小鳥遊家は代々陰陽師の流れを汲み、多くの術者を排出している家である。必然的にその血筋が持つ呪力も高く、強い魂を持つ者も生まれやすかった。
 だからであろうか。
 小鳥遊家では幼子が生まれ成長し、生まれ持つ呪力と魂の強さが解る年頃――――小鳥遊家ではそれは五歳ほどだった――――になると、途端、力を求める妖に狙われるようになる。
 そうやって小鳥遊の力を狙ってくる者は、なにも純血の妖だけではない。妖を使役する人間も、己の配下をより強くするために小鳥遊の血を引いた子供の血肉を欲した。
 呪力の高い血肉、強き魂を持つ者の血肉を喰らい吸収することで、妖の力は高まるのである。それは妖同士でも同じ事であり、自然の掟と言っても過言ではない事象ではある。
 そして今年で五つを迎える小鳥遊家当主の孫もまた、その運命を辿るのである。
 けれど、幾ら被食者といえど小鳥遊は陰陽師の流れを汲む家。そうそう容易く妖に血肉を分け与えるはずがなかった。

「恭哉」

 小鳥遊家当主の孫、恭哉の五つの誕生日前日。結界の張られた家の敷地内にある大木の下で古い陰陽術の本を読み耽る恭哉に声が落とされた。
 視線を上げると、その声の主である当主、桐生が視界に映る。それを認め、恭哉は読んでいた本を閉じた。

「なに、爺様」
「明日はお前の誕生日だな」

 何を当たり前のことを、と恭哉は胸中で呟く。彼は年齢に似合わず、酷く大人びた子供であった。
 静かに頷いた孫に視線を緩ませ、桐生は恭哉の頭に手を置き、猫っ毛の髪をくしゃり、と撫でる。

「一日早いが、お前に贈り物をしよう」

 そう言うと、翁は恭哉を立たせ、自身の部屋へと向かっていく。恭哉は首を傾げながらも静かに付いていった。
 縁側から廊下へと上がり、すぐに障子戸を開けて桐生の部屋へと入る。
 ぱたり、と軽い音ともに閉められた障子戸を通して部屋に陽射しが入り、そこそこの明るさが保たれていた。けれど明るい中から入ったこの部屋は、幾分薄暗く感じられる。
 はし、と瞬きをして部屋の明度に慣れようとする恭哉を座らせ、上座に座った桐生はそっと、皺だらけの手に小さな古びた鈴を乗せて差し出した。

「ごらん、これが恭哉への贈り物だよ」
「…………鈴?」
「そう、鈴だ。けれどただの鈴ではないのだよ」

 柔く微笑み、桐生はその鈴を振ってみせる。しかし、普通なら鳴るはずの音は鳴らなかった。
 思わず鈴を凝視する恭哉の前で、それを今度は振らずに鳴らせて見せる。
 見開かれた恭哉の目に満足し、桐生は種明かしをすることにした。

「これはね、式の依り代なんだよ。だから鳴らない。鳴らすためには、呪力が必要なんだ」

 そしてある程度呪力を込めると。
 言って、桐生は鈴に呪力を込め始める。軽やかな澄んだ音が響き――――――――部屋の中に、少女が現れた。

「お呼びですか、主様」

 蜂蜜色の長い髪、琥珀色の瞳。それなりの明度とはいえ、少しばかり薄暗い部屋の中でも解るほど病的に白い肌。

「宵明姫だよ」

 彼女は、鈴を依り代とする式だった。
メンテ
Re: 短筆部文集 // 4冊目 (ゆるゆると製作中!) ( No.7 )
日時: 2008/04/30 18:08:27
名前: 飛亜

一輪の薔薇は誰かに寄生しないと生きていけない

そう

例えば――――…



水面に描かれる波紋。
そこに降り立つ一人の少女。


少女は水面を歩きました。
すると目の前に一輪の薔薇の花が。


『…薔薇?綺麗…まるで雪みたい』

雪のように白い薔薇。
ふと触れてみたい…という感情が湧いてきた
とその時。



しゅるん

『!?』

少女の足に巻きついた薔薇の茎。
見ると、白薔薇がまるで自分を見ているようだった

『何……?怖い……』

恐怖で震えた。

シュッと一瞬の如く、少女の腕、腹部に絡む


『―――…!』
『―――っ!』

それは叫びにもならなくて。
痛いという感覚は無いのに。
どうしてか、涙が出た。

すると、ザパァと音をたて、あの白い薔薇が姿を現した。
少女は体をビクッと震えてしまった。
すると薔薇は少女に問いかけた

『今一度問う お前は 戦う覚悟はあるか』
『え…?何……?戦うって…』

何を言っているのかわからなかった。
戦う?何に?疑問が交差する

『お前の――その右眼……』
『え…?』

シュッと音をたて、薔薇は少女の右眼に……


『きゃああああ!!!』

喰らいついた。グチュ、グチュ、グチュと聞きたくも無いようなグロテスクな音をたてて。



フラッと少女は倒れた。
水面にいるのに水飛沫がたたない。夢だから?

――だが、これは夢ではない。

少女の右眼には…白い薔薇が…寄生していた…


(薔薇に愛され、薔薇に適合した瞬間)

↑迷走者、琴葉ちゃんの過去。
メンテ
能天気な神サマ ( No.8 )
日時: 2008/04/30 19:03:34
名前: 神凪由華
参照: http://mbbs.tv/u/read.php?id=illustsuki&tid=63

>>3続き

「・・・どっちでもいいって・・・・。」
「ん〜、君はさ、基本的に天国行きなわけ。だから地獄行きたいなら行けばいいだろうし。」
冗談じゃない。誰が好んで地獄なんか行くかよ!うん。もちのろん、天国だ。それにあれだ、地獄っつーと針山・・・
「とかは無いから。」
「またかよっ!!」
「だから心の声、出てるって。あ〜・・・地獄ってもサ、罪の分だけ牢獄にいるだけだし〜・・・ぶっちゃけ暇?」
おいおい。神様ぶっちゃけすぎだろ。
うん。おおいに突っ込みたいぜ。
そんな思いにふけってると、自称神様は突然聞いた。
「君さ、死にたかったワケ?」
「・・・はあ?」
いや、死にたいとか死にたくないとかの問題の前に、俺、死んでるジャン。大丈夫か?こいつ。
「いや、普通だったら、死にたくない、とか言うぜ?」
「あ〜・・・。」
そっちか。
ん――――――死にたかったのか?俺。
むしろ・・・
「死にたかった、ってゆーよりは、生きてても死んでてもどっちでもよかった、ってのが正しいんじゃねえかな・・・?」
そうだ。俺は、生きてても死んでてもどっちでもよかった。
日常に、飽きていた。生きる価値を、自分がいる訳を見出せなかった。
だから、死んでも生きても同じ事。
「ん・・・何で?」
「あー・・・俺、お袋病気で、親父は酒豪、暴力とかだからサ、将来の夢、諦めるしかないんだよな。
今も金になるバイト。ま、酒代に消えるんだけど・・・。
いつも退屈で、将来も夢、なくて。高校も行きたいとこに行かせてもらえなくてつまんねェしさ。
夜の街ふらふら出歩いて。なんかもうどっちでも行って感じ。」
なんか、言ってて悲しくなった。
・・・だけど、もう死んだんだ。俺。
「・・・生きる、気持ち・・・無い?」
「・・・は?」
何?は?え?
いやいやいやいや、俺死んでるジャン!!!待ておい、え?
「君の後ろにある門。そこを潜れば、君はもう一度生き返ることができる。」
「え?」
振り返るといつの間にか、朱色の門があった。
「え・・・・でも・・・俺、なんかアンタと話してた方が・・・楽しいし・・・。」
「・・・人は、いつか死ぬものだ。・・・君は、まだ生きることができる。でも、世の中には生きたくても生きれなかった人が、たくさん、いる。」
「え、おい・・・。」
待てよ、勝手に話を進めるな
・・・と、言おうと思ったが、神様のその、真剣な眼差しに何も言葉を返せなかった。
「いい?よく聞け。君はまだ、幸せをしらない。生きてきて、よかったと本当に思ったことがない。世の中にはそんな事を感じずに、望まれずに死んだ人間が、たくさんいる。
でも、君は選択権がある。生きれる。
ここで、君がどうしても死にたいなら、止めない。」
「・・。」
・・・神様が、何を言いたいのかは十分理解できた。でも、まだ迷いがある。
「・・・わかったよ。」
沈黙の後、出した答えは生きること、だった。
「・・・ん〜じゃいっちょ、生きてみますか!!」
まだ迷いはあるけれど。
それでも一歩、後ろを向き、踏み出す。
「また、何十年後かに来るからよ、そしたらもっと、話そうぜ。」
「いいよ。その時は。年をとってたら今の若さにもどしてあげるさね。」
「あははっ上等っ!精一杯老けてやるよっ!」
また・・・・来れるよな。
うん。人間いつか死ぬんだからな!じゃ、その時までこの話の続きはお預けにしておくか。
朱色の門の前にきて、深呼吸。
「じゃ・・・。」
俺は門をくぐっていった。


「最後に、君に一言。『     』」

最後に、神様の声が聞こえて。


俺は――――――目覚めた。










「直人っ!!!直人っ!!!」
お袋の声が聞こえた。あ・・・ここ、病院か。
あ〜・・・俺はなんてすごい経験をしたんだろう。三途の川渡ったどころか神様にも会っちまったぜ。
夢?
んなワケねェさ。
だって・・・――――――







+++++2年後+++++

「ゲストは今人気のアーティスト、『Naoto』さんですー!」
「こんにちわ。お願いします。」
俺は2年後、念願の歌手デビューを果たした。夢を、叶えたのだ。
今、お袋は親父と離婚して、病気も順調に回復してきてる。俺もその為に短期間で人気になるよう、頑張った。
歌と共に、本も出したのでそれが話題を呼び、デビュー作は大ヒット。オリコンチャート1位を獲得。
え?なんて曲を出したって?
なんて本を出したって?
2つは共通してんだ。タイトルは・・・








           『能天気な神サマ 』






end...

++++++++++++++
能天気な神サマ、完全オリジの感動もので終わりましたぁ・・・。
けっこう書いてて楽しかったです♪
設定が気に入ったので、第2作も作ろうかと思いまして。
まぁぐだぐだですが、見捨てずに最後まで読んでいただき、ありがとうございましたっ!
メンテ

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