Re: お題使用リレー小説「金色の獣が駆け抜けた世界」 ( No.32 ) |
- 日時: 2008/09/07 22:11:56
- 名前: 深月鈴花
- 参照: http://fiestflower.seesaa.net/
- 「……え、なに…」
してるのかしら、と続けようとしたであろう口をフェローラはつぐんだ。 スィッタ、ウィルド、センリ、萱田。 きっと騒ぎを聞きつけてやって来たのだろう。ただ、その雰囲気が穏やかと言えるようなものではない。 暗くてよくは見えないが、誰かが横たわっているのもわかった。
「…行くわよ。」
刹那の言葉に、フェローラは黙って従うことにした。と、とっさに掴んだ自分の弓。それにに貼った札が、1枚ヒラリと床に落ちた。 「え……?」 フェローラは時がとまったように、その札を見つめた。
「急いで!」 一瞬だけ止まったフェローラの時間感覚が刹那の言葉でかえってくる。 「すぐ行くわ!先に行ってて!」 一瞬疑問符を浮かべた刹那だが、すぐにパタパタと外まで走って行った。 刹那の足音が遠くなったのを確認し、落ちた札をあわてて拾う。 『札が、はがれるなんて…今までそんなことなかったのに。』 漠然とした嫌な予感が、脳内をよぎる。 この館、何かある。 刹那には言わなかったが、先ほど監視機械類を探していたときに感じた、寒気。結びつけずにはいられなかった。 この嫌な予感と寒気が何かを予感させているのだとしたら。
「外が危ない…!」
☆★☆
刹那がそこへ着いたとき、やっと横たわっているのが誰かわかった。…アイだ。 「何があったの?」 刹那はいたって冷静にそう聞いた。 「わからない…けど、」 それに答えたのはセンリで、その視線はチラリ、と見たことない少年の方に向いた。 「…誰?」 少年は、ふふ、と怪しく笑った。 「ボクに答える義務はないからね。」 刹那はその答えにへぇ、と少し感心したように呟いて、それから無表情に 「そうね、あなたに答える義務はないわね。でもそれはあなたが私達に危害を加えなかった場合に過ぎないわ。もしも彼にあなたが危害を加えた結果、こうやって横たわっているのだとしたら…話は変わってくるわよね。」 そう、淡々と述べた。何人か感嘆の声を漏らす者もいたほどだ。 それでも少年は怪しい笑みを崩すことなく、むしろ愉快そうに笑みを深めた。 「面白いことを言うね。でもその答えは残念だ。なぜならボクがこの人に危害を加えたわけじゃないから。」 「証拠は?」 「証拠はボクの中だけにある。」 一見理不尽。いや、理不尽すぎる。だがなぜか言葉が出ない。 それがこの少年の能力なのか、天性のものなのか、それはわからないが。 「とりあえずこの人を運んであげた方がいいんじゃないかな?夜風は少し冷たい。」 少年の言葉に従うのは癪ではあったが、ウィルドがアイを抱えた。 「とりあえず、俺達の部屋に運んで、」
ザァ…
ウィルドの言葉を遮って木々が、薙いだ。だが、それに混じって何か近づいてくる。 嫌なオーラを背負った何か。それが、だんだんと近くなり、場所がはっきりとした。……後ろ、だ。 全員がほぼ一斉に後ろを向いた。
「あら。皆さんお揃いで。」
トルキズア。 そう名乗った幼い少女が小首をかしげ、笑んでいた。
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お待たせしているということで急いで書き上げました…! 駄文なのは変わりませんがね!(いい笑顔) 次飛亜さんお願いします…!
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Re: お題使用リレー小説「金色の獣が駆け抜けた世界」 ( No.33 ) |
- 日時: 2008/09/14 21:49:11
- 名前: 飛亜
- 「あなたは……」
「まぁ、そのお方。どうかなされたのですか?」 トルキズアは刹那に問いかける。 「…連れが倒れてね。…そうねソファでいいわ、どこ?」 刹那は状況をトルキズアに説明する。 「リビングですか?ならこちらですわ」
トルキズアはアイを抱えたウィルドを案内する。
「…ウィルド」 「?なに?」 刹那がウィルドに近づき、耳に囁いた 「…気を付けなさい…ここ、なんか禍々しい感じがするから」 「? あ、あぁ…分かった 気を付ける」 そう言うと、ウィルドはトルキズアに付いていく ― ―― ――― ――――** 「こちらですわ」 リビングに到着。赤い薔薇の絨毯にアンティークを思わせるソファ、そして暖炉。 暖炉には炎は無かったが、上に飾ってある蝋燭に炎が灯っている。ウィルドはアイをソファに寝かせた。 「申し訳有りません。これからやらねばならない仕事がありまして…少し“ここ”を離れますが…」
…ここ?ウィルドは“ここ”という単語に引っかかった。
「もし何か御用が有りましたらお呼びください。失礼します。」 トルキズアはリビングから離れた。
「刹那が言った禍々しい感じ…きっと他の奴らも感づいてるだろーな…」 ウィルドはリビングの天井を見つめた。 「…?」 ふと見ると、天井のシャンデリアが錆びれている。かすかな光と、金粉が接がれたような… 「…一体ここはなんなんだよ…」
「……」 「どした?気分でも悪いか?」 センリが刹那に話しかけた 「…いや…」 刹那は口元を軽く押さえた。 『なに…この妖しくて禍々しくて…哀しい感じは……?』
刹那は空を見つめる。今日の空は曇り空。
…もうじき、雨が降る
■ □ ■ □ 刹那ばっかでごめんなさいorz短くてごめんなさいorz いや〜駄文ですね、こりゃ。 次、日華さんお願いします。
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Re: お題使用リレー小説「金色の獣が駆け抜けた世界」 ( No.34 ) |
- 日時: 2008/09/24 19:00:41
- 名前: 日華
- 「―――――……」
エルティが、ぴたりと足を止め、後ろを振り向いた。 鬼柳もそれに合わせ、足を止める。二人とも何も言わないが、考えていることは同じようだった。 やはり、此処は何かおかしい。
二人は館の周辺、と言っても森に囲まれているので、その森の中を歩いていた。最初は会話もぽつぽつと続いたが、段々と二人とも喋らなくなった。 暗い森の遠くに、館の光が微かに見える。一応、迷わないように気を付けていた。 最早散歩とも呼べない状態。自分たちの歩く音と、風が木々を揺らす音以外聞こえないが、何か気味が悪い。 何故か、どちらも帰ろうとは言い出せなかった。このまま進んで行ったら、何かがありそうだった。 何が? あってはならないだろう。しかし、二人はただ漠然とした不安に纏わりつかれ、足を進めていた。
二人が足を止めた瞬間、音は無くなった。風も吹かない。しかし悲鳴が聞こえてきそうで、音が無い状態は息苦しかった。
「…なあ鬼柳、」
何か言いかけ、後ろを振り向いたエルティが、鬼柳の様子を見て言葉を切った。 エルティと同じように足を止めていた鬼柳だが、辺りの雰囲気を気にしていられる状態ではなかった。 暗くて殆ど何も見えないが、急に速くなった呼吸数、少し傾く体は、暗くともわかった。エルティが黙っていると、腕をぐっと掴まれた。咄嗟に掴んだのだろう。
「、戻ろうか」 「…ごめんね」 「背負おうか?」 「平気」
二人は館の明かりに向かって歩き出した。再び、自分たちの足音だけになる。 それ程遠くまで来たつもりはなかったが、気付かない内に館から離れていた。明かりが遠い。エルティは時々、ちらりと隣を見て、歩調を合わせた。
「…血が逃げた、とか言ってたよね」
沈黙をゆっくりと破り、エルティが口を開いた。いつもより少しばかり低く、小さな声。 数歩歩く度、明かりを確認したが、あまり近づいているという実感がない。 鬼柳は一度エルティを見上げ、すぐに前を向き、同じようなトーンを落とした声で答えた。暗いこの道では、表情も分からなかった。
「うん」 「その逃げた血ってさ、どうやって帰ってくるわけ? 見つけなきゃなんないの?」
エルティの問いに、鬼柳は少しの間考えてから、答えた。
「逃げた時より大きな傷を作る。そうすれば大体は帰ってくるはず。でも、あっちも気まぐれだから、余計に逃げてく時もある。タイミングが大事なの。でももし余計逃げてったら、その時は仕方ないから、輸血かな」 「…うわあ。物騒な話」 「ほんとに。何度死にかけたことか」
二人とも苦笑しながら話していたが、笑える話ではなかった。エルティは何か言おうとしたが、口を閉じた。 その様子を見て、鬼柳は首を傾げる。
「どうしたの?」 「ん、いや何でもない」
その時、右の方からガサリ、と音が聞こえた。反射的に二人とも足を止め、身構える。 こういう場面に慣れているとは言え、心拍数が跳ね上がる。自分の心臓の音がやたら大きく聞こえる。 ざあ、と風が吹き、数秒間が途轍もなく長く感じた。もう一度、ガサリという音が聞こえ、暗い中から人影が揺れる。 何があっても、不思議じゃない。あの少女の館の周りなら―――
「…エルティ? 鬼柳か?」
聞き覚えのある声。二人はそれでも警戒を解けず、はっきりとその姿が見えるまで目を凝らしていた。 雪人。暗いながら、近くまで来ればよくわかる。よからぬものが来たと思っていた二人は、驚きながら安堵の溜息を吐いた。 「こんなところで何やってんの?」 「えーと…散歩? そっちこそ、何?」 「俺はアイを探しに。館内めぐってたんだけど、外がちょっと気になって。今から帰るとこ」
ふうん、とエルティは、納得したような、しないような、曖昧な声の調子だった。雪人が辺りを見回し、それから目の前の二人を見る。 エルティの影に隠れるように立っている鬼柳に首を傾げ、すぐにああ、と納得する。
「貧血?」 「あー…うん。いつもならそんなに苦しくないんだけど…機嫌が悪いみたいで」
エルティと雪人は、機嫌?と一瞬眉を顰めたが、二人とも何も言わなかった。
「それなら尚更早く帰るべきじゃない?」 「ああ、今館に向かってる」 「? この方向で?」
この方向――? 雪人はエルティと鬼柳の右側から歩いてきた。どちらも館に向かっていたのなら、平行に移動するはずだ。 しかし確かに見えるのは館の光だけ。エルティはもう一度歩いた方向を向いた。
「…は?」
光がない。今までそれに向かって歩いて来たはずの光が消えている。 エルティは鬼柳と目を合わせ、確かにそちらに向かって歩いたことを確認したが、何度見ても、光はない。
「待て? 俺だってこっちに向かって歩いたけど―――今、俺が目指した光も―――」
雪人がぐるりと回りを見回す。そして、自嘲のような薄笑いを浮かべた。
「ない」 「嘘…」 「絶対トルキズアだ」
三人は一気に脱力し、暗い溜息をついた。確かに近づかないとは思っていたが―――まさか、こんな。 トルキズアが何かをしたから、という考えは言わずとも三人共通じ合っていた。ここまで期待通りのことをしてくれるとは。 暗い森の中、短い沈黙が流れた。そう簡単に帰してはくれなさそうだ。下手に動くか、それとも助けを待つか。 三人、という安心感もあり、然程不安でもなかったが、これからどうするべきか、それぞれ考えていた。
「やっぱ、動くしかないだろ」
そう切り出したのは雪人だった。その声に二人とも顔を上げる。二人とも頷き、とりあえず歩いてみることになった。 館の光は一応ある。が、歩いている途中でどんどん場所が変わっていく。当てにせず、そのまま歩く。 途中、何度か鬼柳が前のめりに倒れかかったので、隣にいたエルティが肘を持って引き上げた。数回それが繰り返され、結局エルティが背負っていくことになった。 背負われてばっかだ、と申し訳なさそうに笑う鬼柳の手が、異常に冷たいことを、エルティは知った。 エルティに背負われ、幾分楽になった鬼柳が、暗い口調で話し始めた。
「僕が知ってたトルキズアなら、こういうことしても、危害は加えない。朝になったら館に着く」 「…と、言うと?」 「しばらく会ってなかったんだ。その間に何があったのか、僕は知らない」 「アイもどっか行くし?」 「愉快なお屋敷だな」
軽く嘲け笑うようにエルティが言った直後。雪人の時と同じように、ガサリと葉の擦れるような音がした。 三人はぴたりと足を止め、雪人は前を、エルティは後ろを、鬼柳は右をじっと見つめた。無意識に、息が止まる。 ガサ、ガサ、と音は近付く。
「―――昔のトルキズアなら、ねえ」
雪人が小さくそう呟いた時、音が急に大きくなった。
■■■ お、遅れてすいませ…!そしてこんなところで切っちゃってすいませんorz 全員書きたかったんですが(特にエリエットさん!)、エルティ鬼柳組+雪人で書きました… 森って言ったらあれかな、方向感覚失うとかかな!とか思ってやったけど、ぐだぐだでした(´・ω・`) これからどうなってくかは、あの、おまかせします…!(すごい無責任w よろしくお願いします栞っ!
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Re: お題使用リレー小説「金色の獣が駆け抜けた世界」 ( No.35 ) |
- 日時: 2008/10/09 22:05:52
- 名前: 栞
- 参照: http://blackaliceblack.blog116.fc2.com/
暗闇の中、音のする方向に見える影は―――確かに、人影だった。 館からの光を背に受け、逆光で姿は殆ど確認できない。
「お前、」
エルティが一歩踏み出そうとした瞬間、耳元で囁かれる声。
「…だめ、エルティ逃げて!」
それが囁きでなく、体調が思わしくない鬼柳の必死の叫びであったと気付いた時―――影は既に、エルティへと手を伸ばしていた。
「エルティ!」
緊迫した雪人の声。確かに数秒前までヒトの形をしていたその影は、手であった部位を鋭い刃状にして伸び、身体の部分は少しずつ融解するように崩れていく。
「…あ、危なっ…」
場の雰囲気を崩すような、能天気な口調の声。…エルティだ。 咄嗟に避けたのだろう、体勢を崩しそうなぎりぎりの姿勢でいた彼はひょい、と身を起こすと背負っていた鬼柳を地面に降ろした。
「ごめんな、吃驚しただろ」 「ううん。…エルティ、血が」
反応が遅れたせいか、エルティの右頬には切られたような傷ができていた。決して浅くはない。
「大丈夫だよ、それより」
ぐ、と服の袖で強く血を拭う。一瞬眉を顰めたが、視線は黒い影にあった。
「何だ、あれ…」
雪人が呟いた瞬間、どろりと影が崩れた。 気付けば、周囲に少しずつ、闇に紛れて黒い塊が蠢いている。気味の悪い、地の底から響くような唸り声。 ―――囲まれた。 雪人が小さく舌打ちをすると、塊のうち一つが形状を大きくし、壁のように勢いよく襲い掛かってきた。 咄嗟に飛び退き、その瞬間に何かを投げた。光を反射した所からして、暗器の短刀。
「ったく、何なんだよあれは…」 「…や、魔物だろ」 「それは解ってる!」
冷静に突っ込んだエルティに思わず言い返す。 鬼柳はまだ青白い顔のままだったが、襲い掛かる魔物にナイフで応戦している。 強いな、と二人に心の中で拍手を送りつつ、自身もベルトに挿してある十字槍を取り出した。 瞬時に柄が伸び、身の丈ほどの長さになる。
「エルティ、こいつら…見覚えは?」
魔物を傀儡を操り投げ倒して、雪人が問う。 エルティはああ、と頷いて答えた。
「あるよ。…二年前に、雇われて行った先で戦った」 「おま…それ、早く言えって。…対処法は?」 「…あれは闇の属性…ってか眷属、だな。土人形の影版みたいなもの?」 「じゃあ…ずっと倒せない、ってこと?」
しゅ、と鬼柳が真横に薙いだナイフが、魔物を両断する。 エルティが前方からの攻撃を避けるように、後ろに跳んだ。
「…いや、大丈夫。一応心臓部みたいなのがあるから…それさえ破壊すれば倒せる」
エルティが呟いた瞬間、鬼柳のナイフが魔物を貫き、魔物は断末魔の悲鳴を上げながら闇に霧散した。
「お、ナイス」
振り返ってにこりと笑うと、鬼柳はまだ顔色は悪いもののにこりと笑顔を返す。 雪人の傀儡も、魔物の一体を破壊する。糸を引き寄せ、低く呟いた。
「…これ、人為的だと思うか?」
呟きに、鬼柳が即座に否定した。
「…トルキズアは…違うよ。こんなことをするはずじゃ、ないと思う。僕が知ってた限りでは」 「魔物は人の気配、というか…匂いに寄り付く習性もあるしな。人気の無い屋敷にここまで沢山集まったんだ、魔物だって狙いをつけるさ」
エルティは言いつつ心の中で苦笑した。まるで言い聞かせているようだ、自分自身に。 これはあくまで自然現象だ。…いや、そうであって欲しい。 エルティの発言に、雪人がうっすらと笑みを浮かべた。
「俺らは美味しい晩御飯、ってか?…冗談きつすぎるな」 「ははっ、同感ー」
くすくすと状況に不相応な笑いが零れて、三人の動きが更に早まる。 少しずつではあるが、魔物は減ってきている。 勝てない相手ではない。…それに、ここに集まった仲間たちは魔物退治を名目として来たはずだ。
救援はなし、逃げ場もない。 けれど三人は、僅かな光の差す暗闇の中で―――確かに、笑っていた。
―――――――――――――――――――― ごごごごめんなさ…! 本当文章が書けないです、すいません。情景描写っておいしいのかな(…) とりあえず日華に続き、エルティ・鬼柳くん組+雪人さんで。 なんか戦闘シーンのくせにぐだぐだですみませ…武器も何が良いか解らなかったので…!指摘お願いします! ものすごく続きの書き辛い終わらせ方しますすいません! ではえるちゃんお願いします!
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Re: お題使用リレー小説「金色の獣が駆け抜けた世界」 ( No.36 ) |
- 日時: 2008/12/23 15:06:07
- 名前: 桜
- 参照: http://mist26.jugem.jp/
暗さを増していく窓の外を眺める。 気品を漂わせる装飾品も、気付けば全てが色あせているこの館は何かが異常であった。 異常である何かを隠そうとする空気が充満している。 スィッタはエリエットの広げていた布の模様を思い出そうとしながら、トルキズアが出て行った扉のあたりに視線を動かす。
何か、掌の上で転がされているような。 仏の掌を走り回る猿の話を髣髴とさせる。 自分が動いているのではなくて、山が動いているのだ。 手の上で動き回る小さな猿を見下ろしながら指を動かす仏。
ダーツが的に当たる感覚が訪れるのに似た感覚が頭を駆け抜けた。 自分たちは何か巨大なものの上に招き入れられている。
「…しかし、もうすぐ夜だというのに」 「女の子が一人で歩き回る時間じゃない、って?」
ぽつり、ぽつりと会話が紡がれる。 小さな声は部屋の中に篭る。 館の中の広さには不釣合いなほど人が少ないのに、不思議と響き渡る感覚はしない。 それほどにこの館の空気には、一種沈鬱ななにかが巧妙に混ざりこんでいた。
「雨もきそうですし、この空」 「傘ぐらい持ってるでしょ。 それより」
センリはソファの上に視線をやった。 ウィルドが心配そうにアイの顔を覗きこんでいる。 アイは静かに目を閉じたままである。
「客人が体調不良なのにそれ放って家主がどこか行っちゃうっておかしくない?」 「……まぁ、それも…そうですよね…」
萱田は自分以外の人間を否定することを極力避けたがるらしい。
「そもそもさぁ、どーしてアイちゃんはあんな場所にいたのさ」
穴が開くほどアイの顔を見つめていたウィルドが顔を上げてスィッタに応じる。
「わかんね。俺がギター聴かせてってしつこくしたから怒ったのかも」 「ギター?」 「あ、そういえば吟遊詩人とか…」 「…んー…、あ!思い出した。言ってたね、そういえば」 「……でもそんな、気絶するほどムカつくようなこととは思えないな」
ウィルドは、だったらホントにわかんねぇなぁ、と目を伏せた。
行き詰まった、という空気が色濃くなる。 この館からは逃れられない。しかし何かをして逃れれば、謎とともに色々なことがわかる。 そういった雲を掴むような希望もあった。
「オレ、一旦部屋に戻るよ。エリエットが何かわかったかもしれないし」
フェローラの、何か一つの確信を持った視線と鉢合わせる。
「あたしも一緒に行っていい?」 「もちろん。じゃ、行こう」
萱田の「き、気をつけてくださいね。…よくわからないですが」という言葉に背中を押されて、リビングを出た。
*
エリエットは驚きながらも、やはりそうか、という予想が的中した感覚に少なからず満足した気持ちがあることを感じた。 呪術であった。それも、普通では考えられない規模で仕組まれたもの。 皆がそうであれば間違っていてもそれが常識となる。この手の呪いにはヒトの感覚というものが不可欠だ。
森にいる3人はもう気付いただろうか。 この呪いを早く解いてしまわねばならない。 しかし自分一人でするにはあまりに荷が重い。
背後で戸が開けられた音にびくりと肩を震わせてしまった。
「…ごめん、邪魔した?」 「いえ、大丈夫です。…アイは?」 「だいぶ落ち着いたみたいだけど、まだ寝てるよ」
スィッタに続きフェローラが部屋に気遣わしげに入ってくる。 心なしか顔色が優れない。
「……あなたも少し具合が悪い?フェローラ」 「あたしは大丈夫です。でも…外が、外が危ないんです…って思って…」
せわしなくそう言ったフェローラにエリエットは頷いてみせると、広げた布、そして窓の方へ向いた。
「森そのものが操られ動いています。非常に大きな力によって、ね」
☆★☆
すっごい遅くなっちゃって申し訳ありません! とりあえず謎解きを始めさせてみました…へたくそですみません。 説明や弁解は設定スレのほうに書かせてもらおうかなと思います← では次のGardにバトンタッチします!
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Re: お題使用リレー小説「金色の獣が駆け抜けた世界」 ( No.37 ) |
- 日時: 2009/01/01 01:53:01
- 名前: Gard
- 参照: http://watari.kitunebi.com/
- スィッタとフェローラが去ったリビング。館の不気味さも相まって、静かな空気が流れている。
静かな、否、重い空気。 何が起こっているか解らないからこその空気だ。動いてもいいのかどうか、それぞれが躊躇している。 せめてこの不気味さや起こっていることの原因がわかれば、とセンリは窓を見つめながら溜息を吐いた。視界の先には黒々とした森が広がっている。 夜の森というのは、一種の異空間だ。出口を見失えば平常心も見失う。けれど、それはここでは森だけに言えることではないようだ。 この館の敷地全てが、異空間のように感じられる。 はぁ、と溜息を吐くと、絨毯に靴音を吸い込ませながら近付いてきた萱田が窓枠に手を掛け、夜の空気を部屋の中へと入れようとした。 考えが詰まったのだろう。だから何らかの刺激を脳に与え、別の解を見つけ出そうとしている。 だが。 「……………………あれ?」 がたがたと窓を鳴らし、萱田は首を傾げる。窓は開いていない。 「どうした」 声を掛けると眉を八の自に曲げ、困ったように言葉を紡いだ。 「窓が開かなくて」 「鍵が掛かってるんじゃないの?」 刹那が近付き、窓の鍵を調べる。けれど彼女もまた、眉を顰めることとなったようだ。 「鍵、開いてるわね」 そして萱田と共にがたがたと窓を鳴らし始めた。 センリはただそれを見つめていたが、背後の気配に気付くと二人の襟首を掴み、引きながら後ろへ飛び退った。 「なっ」 「ちょっ」 抗議の声がセンリに掛かる前、先程まで二人がいた窓へと何かがぶつかり、その何かが音を盛大な音を立てて壊れる。 呆然とする萱田と刹那の襟首を離し、センリは後ろにいたウィルドに声を掛ける。 「今度は一声掛けて欲しい」 「あ、悪い」 どうやら何かを投げたのはウィルドだったらしい。「開かぬなら 壊してしまえ 窓ガラス」といったところか。 だがその目論見は儚くも崩れてしまった。窓ガラスにはヒビすらも入ることなく、まるで新品のように見える。逆にぶつけた何か――――そこら辺にあったらしい椅子だった――――は脚が砕けて使い物にならない。 「頑丈だな」 「どう見てもそれで済まないと思うんですけど」 萱田の冷静な突っ込みに軽く肩を竦めると、扉の方から気配がした。 振り向くと、廊下を走っていく軽い足音。恐らく鬼柳よりも軽い、子供独特のものだ。館の主であるトルキズアが走ったら、丁度この様な音になるのでは、と思わせるには十分なもの。 急いで扉を開けて廊下へ出ると、視界の端で廊下を曲がり、翻る白い布。 追おうと足を踏み出せば、けれど腕を掴まれて引き留められる。 「ちょっと、何処に行くのよ」 「追いかける」 「誰を?」 刹那の問いに視線を曲がり角の方へ向けつつ、完結に答えた。 「気配と足音の主」 その答えに、刹那の眉間に皺が寄った。 「気配も足音もしなかったけど」 「え」 驚きに目を見開き、他の二人を見ても刹那と同様で。センリの脳裏に一つの言葉が過ぎった。 曰く、「幽霊」。 そんな馬鹿な、と笑えないのがこの館の恐ろしいところだろう。背筋に走った悪寒と共に、センリは三人と共に室内へと戻る。 そして更に愕然とした。 「何、これ…………」 呆然とした声は一体誰が発したものだったか。 先程椅子が当たっても傷つかなかった窓いっぱいに、引っ掻き傷で書いたような文字の羅列、もとい文章が存在していたのだから。 恐る恐る刹那が近付きその表面を撫でる。確かにその部分だけ、ガラスが削られているようだった。 「文章、よね、これ」 「でも意味解んねー。『尾を噛む蛇』とか『〜を仮定とする時』とか。…………解るか?」 「全然解りません」 文章に目を通したらしいウィルドは首を傾げ、同じく読んでいた萱田に問い掛けるも、同じく首を傾げ返される。刹那も眉を顰め文面を睨んでいることから、同じだと言うことが窺い知れた。 センリも文章を見つめる。内容はさっぱり解らないが、同じように解らない文章を嘗て見たことがあった。 「……魔術式?」 「は?」 「特殊魔術式。魔術用語などで書かれたこの文章を解読すると、何らかの魔術が完成するって奴かもしれない」 兎に角エリエットに見て貰おう。 魔術に一番詳しい人間は彼しかいないと言うことで、萱田とウィルドをアイと文字の見張り役にし、刹那とセンリはエリエットの部屋へと走った。
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超絶文章をおかしく書いたGardッス。 うぅ、なんか微妙な内容に……。 魔術式はエリエットさんに対する呪いの解き方のヒントとでも思ってください。 次は玲ですな。 頑張ってくださいな。 …………ほぼ丸投げでスマヌ。
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Re: お題使用リレー小説「金色の獣が駆け抜けた世界」 ( No.38 ) |
- 日時: 2009/01/02 21:42:57
- 名前: 玲
「森そのものが操られ動いています。非常に大きな力によって、ね」
――森そのものが……?
どういうことか詳しく訊こうとした瞬間、ついさっき自分たちが入ってきたばかりの扉が凄い勢いで開け放たれた。 何事かと目を向けると、扉の向こうに見えるのは一組の男女で。 勢いよく開けられた扉とは裏腹に彼らの表情には何も映されておらず、機械のように唇だけが微かに動きを見せた。
「エリエット」
不意に名前を呼ばれ、私ですか? とエリエットが一歩前に出る。 表情には出ていないがセンリと刹那はどこか焦っているようで、忙しげに部屋の中に入り口を開いた。
「リビングに来て欲しい。窓にも……――――」
落ち着いて見えるセンリが珍しく口早に話すなと思ったら、彼はそこまで言って表情と共に唇を固まらせてしまった。 よく見ると微かに目を見開き、窓を凝視している。 不思議に思った他の四人が彼の視線の先を辿ってみると、森の見えるこの部屋の窓に文字の羅列が浮かんでいた。 文章のようで文章でない、そんな文字が。それでもどこか規則的に、刻まれるように映し出してある。
その光景にいち早く眉を顰めたのは刹那だった。 それもそのはず。この部屋の窓に刻まれてあるその文章は、先程自分たちがリビングで目の当たりにしたものと同じだったのだから――。
「何、これ。どういうこと」
頭が痛くなりそうな状況で、懸命に今までの出来事を整理しようとしている中、エリエットの隣にスィッタがやってきて窓ガラスに触れる。 一字一字確かめるように文字を指でなぞり、一人納得した感じで同じように文字を注視するエリエットに視線をやった。
「魔術式だね。それもかなり特殊な――それこそさっきエリエットが言ってたみたいに森一つ軽く動かせそうな」
スィッタの言葉にエリエットが頷き、そんな二人の様子を見てセンリは我に返った。
「解るのか?」 「はい。先程彼らには言いましたが、非常に大きな力によって森そのものが操られています。どんな力かは不明でしたが、この魔術式ならば納得がいく――」
真剣な面持ちで説明するエリエットに、今まで黙っていたフェローラが焦燥の声を浴びせる。
「なら森に居る三人が危ないんじゃないの? 原因が解ったんなら急いで助けに行きましょうよ」
彼女の言うことが最もだ、と、五人は互いに顔を合わせ頷くと扉から部屋を出ようとした――が、その刹那、開いていた扉が何の力も受けずにばたんと大きな音を出して閉まった。 「!?」
突然のことに皆が驚き、刹那がすぐに駆け寄りドアノブを回す。
「……駄目。開かないわ」
しかし何度ドアノブを回転させても一向に開く気配がせず、今度は別の意味で顔を見合わせる面々だったが、考えていることは同じようでセンリとスィッタが前に出た。 ――開かないなら壊すまで、と勢いよく扉に体当たりするもののびくともしない。 フェローラの弓、刹那の拳銃、センリの剣などを使うもリビングの窓同様傷一つつかず、無常に時間だけが過ぎ去っていく。 「……そういえば」
どうしようもないという雰囲気が漂い、誰もが無言を通していた時センリが懐から一つの玉を取り出した。 何故忘れていたのだろう、と自分に呆れ、同時にそれ程切羽詰まった状況だということを再確認する。 センリが取り出した――エリエットが夕方皆に配った、遠い場所にいても互いに連絡をとれるという玉を見て、本来の持ち主であるエリエットが表情を顰めた。
「でもそれは持っている人間同士でしか効果はありませんし、他の人達が持っているという保障も……」 「いや、初めアイを探す前に雪人とウィルドに持たせた。丁度良くオレたち三人が散らばっている状況だ、使えるんじゃないか」
センリの言うことにエリエットがそうですね、と相槌を打つ。 しかし何か思うところもあるらしく、指を顎に当て「ですが……」と呟きをもらす。 センリは状況打開策が一つでもあれば即行動と言わんばかりに玉を使って他の二人に連絡を取ろうとしたが、いくら呼び掛けてもあちらから返事が返ってくることはなかった。 どういうことだ、という表情でセンリがエリエットの方を向く。 対してエリエットは複雑な表情で重く口を開いた。
「強大な力が働いているのは森だけではないということです。恐らくこの館にも……。ですから館周辺にいる間は、この玉の効力はないと考えるべきでしょう」 「……」
一度は希望が見えた一同も、エリエットの言葉に声を失い項垂れる。 暫く閑散とした空気が部屋中を包んだが、それを破ったのは変わらず窓ガラスに刻まれた文字をなぞる青年だった。
「黙ってても何も始まらないしさ、まずはこの部屋で出来ることを考えてみない? この魔術式、調べてみたらオレの知ってるものだったし、エリエットもいるからきっと解除できるよ」
それからセンリと出会った時のようなへらっとした笑顔を向けて、精一杯の自信を奮う。
「オレたちなら大丈夫、でしょ?」
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
中途半端な所でやめちゃってすみませーっ! 羅菜に土下座して謝罪します申し訳!! 気合入れて書くって言った割には短いしあんまり進展してないっつーかもっと状況悪化させちゃったぜあっはっは★← 大丈夫だよ皆次は素敵過ぎる文章を操る羅菜様だから安心して!(何故お前が言う ではでは書き逃げっす! ばい!
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Re: お題使用リレー小説「金色の獣が駆け抜けた世界」 ( No.39 ) |
- 日時: 2009/01/05 23:46:11
- 名前: 三谷羅菜
- 何も見えない、完璧な闇。上も下も、右も左も、在るのはただ全てを呑み込む漆黒のみ。
そんな中に…………三つの小さな光が在った。それだけが闇に呑み込まれずに確かに存在している。光は徐々に大きくなり、それぞれ異なる景色を映し出した。
ひとつは、森の中。無数の魔物を相手に、いつ終わるともわからない戦いに挑むエルティ、雪人、鬼柳の姿。彼らは不敵な笑みを浮かべながら、次々と魔物を闇へと還していた。
ふたつめは、館の中の一室。部屋の中に閉じ込められた刹那、センリ、エリエット、フェローラ、スィッタの姿が映し出されている。突然のことにも動じず、冷静に対処していた。魔術に通じているエリエットと、窓に描かれた魔術式に心当たりのあるスィッタが、窓に手を当てて詠唱を開始していた。
みっつめは、館のリビング。なかなか戻ってこない仲間を心配して、萱田が様子を見てくると言いだしていた。しかし、センリと刹那がエリエットの部屋に向った直後に、リビングの扉にも同じ呪を掛けている。扉が開かないことに気づいた萱田がパニックになり、その様子を見てウィルドも異変に気づく。アイは未だ眠ったままだ。
「……森に居る方だけに、玩具を与えてしまったら、他の方が嫉妬してしまうわね」
闇の中に、呟きが漏れる。すべてを呑み込んだはずの闇の中に、当たり前のように存在している――――館の主。トルキズア。
ふたつめとみっつめの光に、彼女は軽く触れた。ふたつの景色の中に、館の中ならば存在しないはずのものが現れる。人間の形をした、しかし人間ではない……魔物。
狭い部屋の中。気づくのにそう時間も必要ない。 呪いを解こうとしていたエリエットとスィッタがそれを一度中断し、センリ、刹那、フェローラがそれぞれ己の武器を手に取る。 開かない扉を壊そうとして、体当たりをしようとしていた萱田があわてて意識のないアイを庇うような位置に移動し、ウィルドはナイフの鞘を払った。
それぞれの場所で、戦闘が開始する。それを眺めて、トルキズアは微笑した。
「さあ――――始めましょう?」
☆★☆ ……力の限り頑張ってこんなんです。 すみませんごめんなさい申し訳ありません(土下座)。 トルキズアちゃん、なんか別人のようになってますがすみませんすべて私の実力不足と言うか馬鹿っぷりのせいです。 つ、次は凛華様〜。こんなヘタレの次でやりにくいことこのうえないでしょうけれども、大丈夫です。凛華様ならば軌道修正可能ですとも! それでは、石投げられる前に三谷は逃げます(脱兎)。
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Re: お題使用リレー小説「金色の獣が駆け抜けた世界」 ( No.40 ) |
- 日時: 2009/03/04 13:01:31
- 名前: 涼
- 突如現れた魔物に一同はすぐさま戦闘態勢に切り替えた。
別の部屋からも騒がしい音がする。おそらく萱田達の部屋であろう。
「どうやらこっちだけじゃないみたいだね」
するりとかわしながらのスィッタの声。
「狙って部屋に魔物が送られてるなら、送ってる本人はどこからか私達の様子を見てるって事かしら・・・?」 「多分・・・・・・な」
顔をしかめながら、自然と目は窓の方へ。 周りを見ると、魔物を倒しながらも皆が魔術式に注目していた。 魔物が出る部屋に共通なのはこの魔術式。考えることは同じらしい。
矢が飛び交い、銃声が響く。刃先の閃光、守護魔術。 いくら倒しても沸いて出てくる魔物達に次第にうんざりしてきた。 体力にも限界はあるし、無限に出てくると言うのならばやはりこちらが不利になる。
「状況を打破する為にはやっぱり、魔術式を解かなきゃダメみたいね」
ため息と疲れが多少混じった刹那の声にセンリは答えた。
「スィッタ、エリエット。魔術式に専念してくれないか?こいつらは俺らが引き受けるから」 「それが最善策でしょう」
エリエットが頷き、一同は心を合わせた。 そうと決まれば窓辺に近づくしかない。 ただ問題なのは窓を、魔術式を守るかのように群がる魔物達。 これで魔術式が鍵(キー)となるのは確定であろうが、魔物の群れを抜けるのは容易くなさそうだ。
−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*− うをををををを・・・・・・ もう無理でござる (ござるっ?!) なんかもう短文&ぷっつん切れetc.大変やらかした感満載ですみません お詫びの仕様がないデス☆(ぉぃ) 「自分やっていいですか?」なんて聞いてくんなよ!ってな仕上がりになっちゃって・・・ 次こそ凛華様です♪割り込んじゃってすみません(汗) こんな私の文を素敵につなげて下さる事でしょうww では〜^^(逃)
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Re: お題使用リレー小説「金色の獣が駆け抜けた世界」 ( No.41 ) |
- 日時: 2009/07/25 00:35:58
- 名前: 凛華
- 「これは、一体……」
アイを庇う様にして立ちながら、萱田は呆然と、目を見開いた。 突然出現した、黒い影。得体の知れない気配。 半ば反射的に己の武器を構えたまま、萱田はその異物を思わず凝視してしまう。
それを、ウィルドは横目で見て。 ふん、と鼻を鳴らした。
「あれだよね。俗に言う、魔物ってやつ?」 「見ればわかりますよ!でもなんで、こんな突然……」 「そんなの」
決まってる、と言うと同時に、ウィルドはそこから飛び退く。 その一瞬後には、ウィルドの立っていたその場所に、深々と鋭利な影のようなものが突き刺さっていた。
「ここ、変なことが起き過ぎだぜ。とても、普通の場所には思えねーっつの!」 「じゃあ、もしかして……っ!」
ウィルドの方を振り向こうと首を捻る。 と、突然頭の上に影がさした。 は、として見上げれば、そこには何やら広がった、黒い影がそのまま、覆いかぶさろうとしていた。
「うわわわわわっ!」
咄嗟に、剣を突き出す。 その切っ先を掠めた魔物の腕が、いとも簡単にすぱん、と切れ落ちた。 腕を失った魔物はくねくねと、身をくねらせたかと思うと。 揺らぎながら後ろに、後退する。
その隙に、萱田はウィルドに振り返った。
「つまり、これは人為的なものだと!?」 「十中八九はな」
飛びかかってきた魔物の攻撃を避けながら、ウィルドは眼を細めた。
こんな、魔物の出現の仕方は、明らかにおかしい。 先ほどの文字と言い、ここはあまりにも奇妙なことが多すぎる。 そして、なにより。 トルキズアの言い残した、あの言葉が引っかかっていた。
『これからやらねばならない仕事がありまして』
『少し“ここ”を離れますが……』
ここ、とは。 このリビングを、とも取れる。 だが、どうしてあんなにも抽象的な言い方を用いたのか。 もしかして、とずっと思っていた。 彼女の言った「ここ」と言うのがそもそも、この屋敷を差していたのではないだろうか。 もしくはもっと別の……そう、空間というレベルまでの。 この魔物の出現が彼女によるものであったなら、恐らく何処かで見ているはずだ。 もしそれがこことは別の、異空間だとしたら容易に説明がつく。 そう考えれば、「仕事」と言うのは――――――
「っと、お前それ、気をつけろよ」
それ、と自分は自分で魔物と交戦しているウィルドに、顎でしゃくられて。 萱田はへ、と視線を戻した。
……と。
「さ、再生している……っ」
というよりも。 先ほどより明らかに、魔物の数が増えているように感じる。 できれば、気のせいだと思いたいのだが。 不意に、その魔物の一体が揺らいだかと思うと、身をくねらせながらまた、襲い掛かってきた。 それを視界にとらえて、萱田は思わず体を逸らす。これはもう、反射に近かった。 が、上手いこと魔物の攻撃を回避した萱田は次の瞬間には、真っ青になった。
自分が避けたことで、魔物の攻撃の向う先は。
「アイさんっ!」
叫んで、振り返りざまに魔物に剣を突き立てる。 回り込む時間は、とてもない。 先ほどの再生能力を見ているから、この攻撃がどれほどの効果があるかなんてわからないが。 彼女を護らなければならないという意志と、染みついた本能とが相混じって、その事実意識を凌駕していた。
キン、とひとつ、甲高い音が響いて。 次いで何かが、砕けるような音。 そして。 それまで何の音も発しなかった魔物の、けたたましい叫び声。 萱田はその一連の音を、剣を突き立てたままの態勢で聞いていた。 突然の魔物の変化に、目を見開く。 その、萱田の目の前で。 魔物の体が、瓦解を始めて行く。
「これは……」 「こいつは闇の属性の魔物なんだ!端っこをいっくら切り落としたって、すぐ再生しちまうぜ」
だけどな、とウィルドは口の端を吊り上げる。 目の前の魔物のただ一点に狙いを定めて、ナイフを放った。
「人間でいう心臓だ。核みたいなもん。そこを壊せば、こいつらはすぐに消えるんだ」
そう説明する、ウィルドの目の前でも。 今しがたナイフを投げ込まれた魔物が、か細い声を上げながらゆるりと消えて行く。 それはまるで、煙が宙を彷徨って行くようでもあり。 また、この空間そのものに吸い込まれて行ってしまうかのようでもあった。
「ならつまり、そこを狙えばいいということですね?」 「ああ。そうすりゃ、楽勝!」 「……楽しそうですね」 「気のせいって事にしとけ」
そう言うウィルドの瞳は、爛々とした光すら放っている気がする。 やれやれ、と萱田は肩を竦めた。 別の部屋でも、大きな物音が聞こえているから。 おそらくそれは、この魔物がさし向けられているのが自分たちでは無いことを意味している。 だとしたら、当然。エリエットたちも、この異変に気づいているはず。 彼女たちならば、何かしらの方法でこの密閉空間を打破してくれるだろう。 なら、それまでは。 湧き出てくるようなこの魔物たちを相手にしている他、なさそうだった。
「……ところで。どうして君は、そんなに魔物に詳しいんですか?」
ちょっとした、戦闘の合間に思った、素朴な疑問。 しかしウィルドはそれには答えずに、ただ曖昧に笑って見せた。
◇◆◇◆◇◆ 久しぶりです……。 もっと場面を出す予定だったのに……あれぇ?(ぉぃ かなり間が空いてしまった上に、こんなので本当に申し訳なく……。 次はそらちゃん、かな? こんな微妙な終わり方でごめんなさい! なんとか繋げてやってくださいーっ
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