(銀魂 沖田結核ねた4。) ( No.79 )
日時: 2007/06/22 15:41:09
名前: 黒瀬
参照: http://id29.fm-p.jp/8/ginduki/

「ソーゴ、お散歩行こうヨ。新八も一緒ネ」

神楽ちゃんがそう言って、もうずっと寝たきりの沖田さんを揺り起こした。
沖田さんの大きな瞳はぱっちりと開いていたけれど、どこか生気が抜けてて、おきながら夢を見てるかのようにも見える。
それでも神楽ちゃんが身体を揺さぶりつづけるとやっと反応して、
どこか寝惚けたような声で「なんだ、チャイナかィ」とうわごとのように呟いた。
神楽ちゃんはやっぱり気分を害したみたいで、
「なんだって何アルカ!?折角私が誘ってやったのにその言い方!相手に対して失礼ヨ!!」
なんて捲し立てる。けれど半分ほどは聞き流されていて、仕舞いには「うるせーなァ」なんてうざったそうに手で払われる始末。
その態度にどんどん神楽ちゃんは怒りに顔を紅潮させていって、「もういいアル!」と、ばたばた部屋を出て行ってしまった。
沖田さんは出て行った神楽ちゃんのほうを見ようともせずに、ずうっと外に目を向けたまま。

「……沖田さん」

声をかける。僕の声には気付いたようだったけれども、もう声を出すことも面倒くさそうだった。
沖田さんは、結核っていう不治の病にかかっていて、銀さんが土方さんに頼まれて預かることになったのだ。
風の噂で聴いたけれど。土方さんは今北のほうで戦っていて、近藤さんは、
――――斬首されたと云う。
姉上は素知らぬ顔で、清清したわ、なんていってたけど、その夜静かに涙を流していたことを僕は知っている。
もしかしたら姉上も、近藤さんを少しだけ愛していたかもしれない。
 とにかく沖田さんは、万事屋じゃ狭すぎるため僕の家で療養していた。
ここなら真選組の一番隊長沖田総悟がいるなんてばれることもないだろうし、部屋なんて有り余っているから。

それで今日、神楽ちゃんが、「ソーゴを外に出してやろうヨ」なんて言い出した。
僕は最初反対したけど、「誰にも見つからないとっておきの場所がアルネ」なんて言う神楽ちゃんに色々丸め込まれて、今。
予想通りすぎる反応で、苦笑する。
でも僕もほんとは沖田さんに少しでも元気になってもらいたいし、ちょっと協力してやろう。

「沖田さん、本当に行きません?
 神楽ちゃんが、いい所見つけたらしいんですよ。
 辛くなったら僕が担いでいきますし、行きましょうって」
「………お前が俺をおぶるなんて無理あるぜィ」

は、と小さく笑う声が聴こえた。言葉だけは普段と同じ調子だ。

「……神楽ちゃん、楽しみにしてたんです。沖田さんと出かけるの。元気になってもらうんだ、って昨日からずーっと、満面の笑顔で……
 だるいのはわかってるんですけど……」

なかなか相槌が来ないことに段々自信がなくなってきて、最後の辺りはもごもごと声が小さくなってしまう。
ああ、これが僕のだめなところ。なんて溜息を吐こうとしたところに、

「ったく」

と、声が聴こえた。
(え?)と思って、伏せていた目を開けると、いつの間にか沖田さんは起き上がって、
こっちを向いて笑っていた。

「仕方ねーガキ共だぜィ。
 ――今日は天気もいいし、付き合ってやりまさァ」

溜息交じりに、でもどこか楽しそうに、
彼は応えたのだった。




>>74のつづき)