(銀魂 沖田結核ねた3。) ( No.74 ) |
- 日時: 2007/06/22 15:39:28
- 名前: 黒瀬
- 参照: http://id29.fm-p.jp/8/ginduki/
- からり障子を開けて「よう」と声をかけてやると、総悟は顔を明るく染めてぱっとこちらを向いた。
近藤さん、と俺の名前を呼ぶ。にかっと歯を見せてわらってやると、総悟のほうも頬を上気させて微笑んだ。
「明日から甲州だ、総悟」 「遂に、ですかィ」 縁側で庭を見詰めながら会話。踏む土が軟らかくていかにも雨上がりといった感じだ。庭に植えられた樹は競うようにきれいな花を咲かせている。 「これからだよ、総悟」 「えェ」 にこり、笑って総悟は返事。けれどその瞳はゆらゆらと、水面のように心細げに揺れていた。 それはきっと自分の寿命を見据えた上での、弱弱しい、「また置いていかれる」という、疎外感。 総悟は、自分のことを想って置いていかれることはわかっているだろう。 けれど、やはり。あいつは孤独をなによりも恐れたから。 心細くて、寂しくて、たまらないのだろう。 その瞳の奥に隠されている気持ちに俺は身を竦める。目を逸らして、唇をかみ締めた。 「これからなんだ、総悟。真選組も、俺も……お前も」 それまで絶対に死なせやしねェ。そんな意味を含めて言ってやる。 俺とトシと、総悟、は一蓮托生だ。同じ運命を歩み続けると決めた。 だから、それまで死ぬなんて許されねえんだから。死ぬな、と。 しかし今度は、総悟からの返事はなかった。総悟?と呼んでもう一度彼の顔を見やると、少年の瞳は遠くを見ていた。 「………俺ァねェ、近藤さん」 不意に、ぽつり、語りだした。 「……もう、後悔なんてしてねーんでさァ。 ま、副長の座は少し心残りだけど。 他にやりたい事なんざねえし、やんなきゃなんねーこともない。 ……だけど、だけど」 段々と縋るような声音で、総悟は続ける。視線を下に落として、前髪が顔にかかるのも気にせずに。 「俺ァね。ただ、もっと。 あんたや、土方さんや、皆と、 もっと一緒に、いたかった。戦っていたかった。 どうせなら、どうせなら、この身体が裂けたって、血に塗れたって、 剣だけは離さずに。あんたたちと、戦場で、死にたかった、ンでさァ」 気が付くと、総悟はないていた。ぽたぽたと、泪が総悟の着物に染みを作る。 俺もないていた。総悟の言葉を聴く度に目から泪があふれ出て、止まらなくなっていた。 俺は、総悟の細い身体を抱きしめる。すると、総悟の口から嗚咽が漏れ始めた。震えた手が、俺の背に回される。 それから二人で、身を寄せ合って泣いた。周りすら気にせずに、大声で。
(嗚呼、神様とやら。 あんたに命をあやつる力があるってんなら、どうか、どうか。 この小さな少年を、助けてやって欲しい。その為なら、俺の命なんて喜んで差し出してやる。)
と、この日切実にそう思った。
(>>66のつづき)
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