(銀魂 沖田結核ねた2。) ( No.66 ) |
- 日時: 2007/06/22 15:38:47
- 名前: 黒瀬
- 参照: http://id29.fm-p.jp/8/ginduki/
- 桜は満開で、其処彼処にあわい色の花を咲かせる樹が俺の眼に鮮やかに映る。
きらきらと注ぐ太陽の光は暖かで、白く、眼に眩しい。 けれど、空気はひたすら肌寒かった。 「―――できるか」 振り返って、言葉を放つ。目の前の銀髪の男は首の後ろを掻いてから、仕方ねえなといったふうに息を吐いた。 「わかった、引き受けてやるよ。その代わり報酬ははずむんだろうな」 いつもと同じ調子で、男は薄くわらいながら云う。 その表情に少し苛立ちを感じたが、現在の俺にはいままでと同じように喧嘩をしている暇もない。 この話が済んだら一刻も早く此処を発って、俺の仲間が待つ処へと戻らねばならないのだ。 ――最後に俺は、男に向かって深く頭を下げた。 「………頼む。お前にしか頼めねぇんだ。俺じゃ、あいつの傍にいてあいつを看取ってやることはできねえ……だから、」 俺の代わりに、総悟を看取ってやってくれ。 銀髪の男はいきなり頭を下げられたからか眼を丸くしていたが、次の瞬間「顔を上げろよ」と呟いた。 顔を上げて、眼が合う。男は、微笑していた。 「ま……なんだ」 男は少し眼を伏せて、腰に手をやる。それから不意に眼を開いて空を見上げた。 「………鬼の副長サンも、随分と丸くなったもんだよな。俺に頭を下げるたァ」 桜の花弁を眼で追いながら、ぼんやりと続ける。 「行けよ」 俺は眼を見開いた。その内容ではなく、その声音に。 奴の声は、何時になく真剣みを帯びていた。
「――――俺に任せて、お前は派手に戦ってこいや。 報酬は、そん時でいいからよ」 こちらを見据える相手の表情から、何を云っているかが一瞬で理解できた。
派手に戦って、派手に近藤のやつを救い出して、派手に生きて、
派手に戻ってこい。 あいつの為に、お前の為に、戻ってこい。
―――春初めの空が異常に蒼くて眩しくて、そのせいで視界が潤んだ。 それを隠す為に、俺は静かに眼を閉じた。
(>>63のつづき)
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