(銀魂 沖田総悟結核ねた。) ( No.63 )
日時: 2007/06/03 17:08:41
名前: 黒瀬

明日死んでも良いように、いつも覚悟はしてきたつもり。
血飛沫の舞う戦場(いくさば)にいたって、刀を持つ手が震えることもなかった。
だって、心のどこかで俺は絶対にこんなところで死なないってわかっていたから。
だけど、だけど。
近いうちに自分は確実に死ぬんだ、って知らされて、ちっとも怖くないなんてありえない。
死が怖くないわけない。


そろそろ桜の咲く頃だった。
それはべつに誰かに教えられたわけじゃない。
ずうっと昔から決められている日付の区切りと、
日が経つにつれて段々と暖かくなっていくこの部屋と庭の様子から、それとなく感じられていた。
春告げ鳥だって、既にそこら辺をひらひらと飛んでいる。
あの鳴き声を聴くたびに、ああもうすぐ春だ、と実感する。
もうすぐ春だ。
春になれば、もっと仕事が多くなって、きっと忙しくなる。
事件だって増える。俺が。俺が行かなければ、誰が代わりに対応するっていうんだ。
俺が。俺が、行かなければ。
そう思っていても、白い布団から出ることは禁止されている。
禁止されるまでもなく、俺はここから出られない。
昨夜に吐いた血の匂いがふと蘇ってきて、気分が悪くなった。
寝返りを打って、口元に手を当てながら、不意に縁側の先を見た。
すると、黒猫と目が合った。華奢で、きれいで、だけど爛々と輝くまんまるの瞳は、まるで満月みたいで。
「………む、なくそ悪ィ……」
自由に外を駆ける猫が、自分を嘲笑っているように見えたから。
なぜか無性に腹が立った。

――斬ってやる。
黒猫相手に、本気でそんなことを思った。
あの日の剣士としての俺が、心のそこから浮かび上がってくる。
…………その為にあいつは庭に現れたのかもしれない、と、ぼんやり思った。