儚き少女の悲痛な夢を ( No.25 )
日時: 2007/12/09 00:18:55
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参照: http://www.geocities.jp/akatukiquartet

『っわ、何なんだよ、これ・・・・ッ!腕が・・・!』

『ああ、あ、あたしの、手が・・・あたしの、あたしの・・・・!』

『死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない、嫌だ死にたくない・・・・!』


『なんで、どうして』


『せめて、あなただけでも』




『嫌だね・・・全身が蝕まれているのに、痛くて痛くてしょうがないのに、死ねないなんてさ』

『さようなら』

『サヨナラ』

『ばいばい』

『さよなら――――――――――愛してるわ、   』


(・・・・・・・おかあ、さん)


ご理解、頂けましたかな?


(・・・・・・・・・・・これは・・・何・・・?)

そう、御客人。
貴殿はこの世界の住人でございました。
自然に恵まれ、科学の発展で幸せに暮らしていた、平和な世界。
しかし、平穏は崩れ去ったのです。

(やめて)

それは、伝染病の蔓延。
身体の一部が――――鉱石のような形質と化し、次第にそれは身体中へと広がり――――――――――

(やめて、)

生きたまま、気道は鉱石に塞がれ――――――――――

(やめて・・・・!)

血流は硬質化し、自ら命を絶つことも叶わず――――――――――

(やめて、やめてやめて・・・・・ッ!)

声帯も使えず、断末魔の叫び声さえあげることすら許されず、苦しみ死ぬ。

(どうして・・・・こんなの違う、こんなの・・・夢だ・・・ッ!)

いいえ、違うのです、御客人。
小生の封じた記憶に、違えなどございません。
ほら、貴殿は以前も、此処に来られている。
そう、あなたのお母様でしたか?
死ぬ直前に、貴殿を此処まで転送させた。
大したお方です。
そして、貴殿は願われた。
忌まわれし記憶の、凍結を。
小生に再び出会うとき、解凍し真実を知る事を。
生者を失くした世界は消え、貴殿は新たな世界で、記憶喪失者として生きた。

(違う・・・嫌ッ、おかあさ・・・!)

・・・混乱されていらっしゃるのですね、無理も無い。
あの風景は、小生にも少々鑑賞し難いもので御座いましたから。
恐らく、小生が引き受けた記憶の中でも、嫌な記憶に入るもので御座いますね。
凍結するのに、少々時間を要しましたし。
・・・目の前の人間が全て、淡い碧色の、言い換えれば宝石の人型の彫刻になって並んでいらっしゃる。
貴殿はそれを、たった8歳で目になさったのですから。

(・・・・・・・嫌ッ・・・・・!)

さぁ、小生は責務を全う致しました。
この記憶をどうするかは、貴殿次第で御座いますよ、御客人。
辛いのなら、再び此処を訪れるがいい。
その時は小生も<鍵人>として、誠意を御尽くし致しましょう。
さぁ、御客人?

夢は終わった。幻は消えた。

残るは現。

永(とこしえ)の世界に、還られるがいい。

では、行ってらっしゃいませ、ハルリ嬢・・・いえ――――――――――、芦名春璃嬢?


(NO1.>>24)