Re: 短筆部文集 3冊目 (行事があってもマイペースに製作中!) ( No.22 )
日時: 2007/12/08 00:55:22
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参照: http://yamituki.blog.shinobi.jp/

――アーキュラン・モーリヒィ・ブルドン……ね。

「どっかで聞いたことあんだよなぁ、この名前」

前払いとして報酬を半分受け取り、目標が写った写真と紙切れを手に、少年――リエン・ディ・セイリアは夜の路地を歩いていた。
小さく掌の大きさに破かれている紙にはこの路地に至るまでの道のりが記されている。
昼間、依頼者から請け負った"暗殺"依頼をこなすために、まずは目標の居場所を突き止めなければならなかった。
写真を片手に情報を集めると、どうやら相手は細い路地裏の借家で寝泊りをしているらしい。

『その写真なんですがね、二、三年前のものなんですよ』

別れる前に依頼者に言われたことがふと頭を過ぎる。
依頼者の言うとおりならば、今からリエンが会いに――いや、殺しに行く相手は同年代の少年。
本来なら"殺し"など、それも同年代の、胸が痛くなるには十分すぎる行動も、今のリエンにとっては何の感慨もわかない。
ポケットから片手を取り出し、もうとうの昔の黒く染まってしまった手を見る。

――いつからなんて、自問しなくても解るよな

ぎゅっと拳をつくると、写真がくしゃくしゃになり目標の顔が歪んだ。

「……よっし、行くか」

まるで猫のように金色に光る片目で目標の場所を最終確認し、若い万屋は細い路地を駆け出した。
彼の後姿に、迷いは無い。



「此処か」

目的地と思われる借家を前にし、リエンは一通り家の造りを把握した。
窓から中を確認すると目標は既に寝息をたて、呆れたことに窓の鍵は開いていた。
今から殺す相手とは言え無用心だなと感想を漏らし、リエンはそっと家の中に侵入する。
目標まで近付き、写真と顔を比べた。
……間違いなく、アーキュラン・モーリヒィ・ブルドンという少年だと確認すると、彼の横に腰を下ろし額に銃口を押し付けた。

「…………」

何か最後に、言葉を掛けようと思ったが見つからない。
だから無言で、リエンは引き金を、躊躇いなく、引いた。



>>5の続き)