(シンデレラは貼り付けた笑顔と着飾ったその姿で優しくわらう) ( No.15 )
日時: 2007/11/19 18:18:46
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参照: http://www.geocities.jp/akatukiquartet



――――――――彼女は、「外見を着る」。


「服を着る」のではなく、「外見そのもの」を着ている。

今日の彼女は(個人的な価値観を基にするならば)清楚系。

ふわりとしたオフホワイトのワンピースに真っ青なカーディガン、足元は白いパンプスで。

流れるような黒い髪を腰くらいまで伸ばして。

お出掛けには白いフリルの日傘を差しそうな。

澄ました顔で本を読む彼女。

初めて彼女を見る人は、彼女を名前と共に、「清楚系の女の子」として認識し、記憶するだろう。

けれどそれは違う。

一日前に彼女に会ったならば、彼女を名前と共に「姉御系の女の子」として認識し、記憶したはずだからだ。

そう、彼女は毎日服を変え、髪型を変え、メイクの色を変え、口調すらも変えて。

そうして彼女は、「外見を着る」のだ。


[ Chapter.1-1 ]



「――――――――――<サガミヤカレン>」
「・・・・・のわっ」
横から声をかけられ、机に座り前方を眺めていた少年は吃驚して思わず飛びのいた。
「なーに驚いてんの、<アカツカスズト>くん」
「ちょ、先輩・・・・・」
<アカツカスズト>―――――赤塚鈴人は、話しかけてきた少女の方を見て言う。
少女は今まで鈴人が見ていた方向をちらりと見、それからにやりと不敵に笑った。
「なーるほど、例の<変わり者>ね」
「・・・・・・勝手に人の心理読まないでくれます?――――――<シジョウインマコ>先輩」
わざとらしく、フルネームで呼んで。
けれど少女――――四条院眞子は、彼の恨みがましい発言をさらりと流して言う。
「へー、なるほどねぇ、鈴くんってばあんな子が趣味だったの」
「人の話聞いてくださいよっ」
「ふーん、サガミヤかぁ」
鈴人の話を殆ど無視して、眞子は胸ポケットからシャープペンシルを取り出し鈴人の机に何やら書いた。
「凄いよね、この漢字」
そこには、話題の<変わり者>の少女の苗字、<嵯峨雅>。
「・・・・へぇ、こう書くんですか」
「何、あんた知らなかったわけ?」
「転向してきたの、最近ですし。そんな難しい漢字、印象に残るだけで書けやしません」
サガミヤ、サガミヤと机に書かれた漢字をさらにシャープペンシルでなぞりながら鈴人が呟く。
その姿を微笑ましげに見つめて、眞子は口に手を添えると、前方に聞こえるくらいの声で叫んだ。

「おーい、サガミヤちゃーん。お呼びですよーっ」
にっこりと、しかし明らかに悪意と好奇心を含んだ笑顔で微笑んで。
そして、黒髪の綺麗な少女は振り返った。
「・・・・・・・・・・何」
――――――イメージが一瞬で崩れ去るくらいの、不機嫌な顔を浮かべて。



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前スレであったシリーズ、ちょっと書き直したので載せ直し。
正式タイトルは「偽りシンデレラ」です(書け)